ハインリヒ・ドルン

ハインリヒ・ルートヴィヒ・エグモント・ドルン（Heinrich Ludwig Egmont Dorn, 1804年11月14日 - 1892年1月10日）は、19世紀のドイツにおける音楽界で重要な役割を果たした人物です。彼は指揮者、作曲家、そしてジャーナリストとして多岐にわたる才能を発揮し、その生涯を通じて音楽文化の発展に貢献しました。

ドルンは、プロイセンのケーニヒスベルク（現在のロシア領カリーニングラード）で生まれました。幼少期から音楽に親しみ、ピアノ、歌唱、作曲を学びました。その後、ベルリンに移り、ルートヴィヒ・ベルガー、ベルンハルト・クライン、カール・フリードリヒ・ツェルターといった著名な音楽家たちに師事し、その才能を磨きました。

1826年、ドルンは最初のオペラ「Rolands Knappen」を発表し、初演で成功を収めました。この成功を機に、彼は「ベルリン一般音楽新報 Berliner allgemeine Muzikzeitung」の共同編集者としても活動を始め、音楽ジャーナリストとしてのキャリアもスタートさせました。

ドルンはオペラ指揮者として特に高い評価を受け、ケーニヒスベルク（1828年）、ライプツィヒ（1829年-1832年）、リガ（1834年-1843年）、ケルン（1844年-1848年）といった各地の劇場で要職を歴任しました。1849年には、ヴィルヘルム・タウベルトと共にベルリン国立歌劇場の指揮者に就任し、1869年までその職を務めました。この間、彼は数多くのオペラを指揮し、ベルリンの音楽シーンを牽引しました。

ドルンは教育者としても知られており、若き日のロベルト・シューマンに対位法を教えたことは特筆に値します。また、フランツ・リストとも親交があり、彼の音楽活動を支援しました。一方で、リヒャルト・ワーグナーに対しては当初批判的な立場を取っていましたが、最終的にはワーグナーの才能を認め、1855年にはオペラ「タンホイザー」を指揮しています。また、1853年には「ニーベルンゲンの歌」に基づくオペラ「ニーベルンゲン Die Nibelungen」を作曲しましたが、これはワーグナーが「ニーベルングの指環」を完成させるよりも前のことでした。

ドルンは1892年にベルリンで生涯を閉じました。彼の作品は、オペラを中心に、歌曲、合唱曲、器楽曲など多岐にわたります。また、著述家としても活動し、音楽に関する評論や自伝などを発表しました。

主な著作

Spontini in Deutschland (Leipzig, 1830)
Aus meinem Leben (Berlin, 1870–77)
Das provisorische Statut der Königlichen Akademie der Künste in Berlin (Berlin, 1875)

主な音楽作品

Rolands Knappen (1826)
Der Zauberer und das Ungetüm (1827)
Die Bettlerin (1828)
Abu Kara (c. 1831)
Der Schöffe von Paris (1838)
Das Banner von England (1841)
Die Nibelungen (1854)
Ein Tag in Russland (1856)
Gewitter bei Sonnenschein (1865)
* Der Botenläufer von Pirna (1865)

ハインリヒ・ドルンの作品は、今日では演奏される機会は多くありませんが、彼の音楽に対する真摯な姿勢と、ドイツ音楽文化への貢献は、歴史に刻まれています。

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