ハインリヒ・ラスペ (テューリンゲン方伯)

ハインリヒ・ラスペ：テューリンゲン方伯と対立王

ハインリヒ・ラスペ（1204年-1247年）は、13世紀中葉のドイツにおいて重要な役割を果たした人物です。テューリンゲン方伯として、そしてローマ王コンラート4世に対抗する対立王として、彼の生涯は権力闘争と政治的駆け引きに彩られています。

テューリンゲン方伯としての生涯

ハインリヒは、テューリンゲン方伯ヘルマン1世とバイエルン公オットー1世の娘ゾフィアの子として生まれました。兄ルートヴィヒ4世の死後、その甥であるヘルマン2世の後見人を務めます。しかし、ヘルマン2世の母であり後に聖女とされるエリーザベトとは険悪な関係にあり、彼女をヴァルトブルク城から追放したと伝えられています。この出来事は、後世の伝説にも大きな影響を与えました。

1239年までヘルマン2世の後見人を務めた後、1241年にはヘルマン2世が急死します。毒殺説もささやかれていますが、確たる証拠はありません。同年、ハインリヒはモンゴル軍との戦いに参加しました。

エリーザベトの死後、ハインリヒと弟のコンラートは、ドイツ騎士団をマールブルクに定住させました。コンラートはエリーザベトの列聖に尽力し、1236年の列聖式にはハインリヒと神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世が出席しました。

1242年には、フリードリヒ2世の未成年の息子コンラート4世の代理人に任命されましたが、子供がいなかったため、甥のハインリヒ3世をテューリンゲン方伯の後継者としてフリードリヒ2世に認めさせようとしました。

対立王への即位

1245年、教皇インノケンティウス4世がフリードリヒ2世を破門、廃位すると、ハインリヒ・ラスペは対立王として推されました。マインツ大司教とケルン大司教がこれを支持した一方、ラインマル・フォン・ツヴェーターなどのフリードリヒ2世支持派からは批判を受けました。1246年5月、ヴュルツブルク近郊で選出され、「聖職者の王」と呼ばれました。

ニッダの戦いではコンラート4世を打ち負かし、フランクフルトとニュルンベルクを奪取しましたが、1247年、ロイトリンゲンの戦闘で負傷し、ヴァルトブルク城で亡くなりました。

死後と影響

ハインリヒの死により、ルードヴィング家の男系は断絶しました。これにより、彼の姪ゾフィーが後継者を主張、マイセン辺境伯ハインリヒ3世との継承戦争が勃発します。その後、対立王にホラント伯ウィレム2世が擁立されますが、ドイツはその後大空位時代へと突入していきます。

ハインリヒ・ラスペは3度結婚しましたが、子供はいませんでした。彼の生涯は、テューリンゲン地方の政治、そして神聖ローマ帝国の権力闘争に深く関わっており、その影響は、後世のドイツ史に大きな足跡を残しました。彼の短い治世と、その後の継承戦争は、中世ドイツにおける権力構造と相続問題の複雑さを如実に示しています。聖女エリーザベトとの関係、そしてルードヴィング家の断絶という悲劇的な結末は、彼の生涯をさらにドラマチックなものにしています。彼の死後、ドイツは長く続く混乱の時代へと足を踏み入れていくのです。

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