大空位時代

神聖ローマ帝国の大空位時代：13世紀の権力闘争と帝国の危機

神聖ローマ帝国史において、大空位時代(Interregnum)は、1250年から1273年にかけて、ローマ王位が空位または極めて弱体化した時代として知られています。この期間、帝国は深刻な政治的混乱と権力闘争に陥りました。

ホーエンシュタウフェン朝の終焉と王位継承問題

ホーエンシュタウフェン朝皇帝フリードリヒ2世の死後、後継者であるコンラート4世がローマ王位を継承しましたが、1254年に若くして死去しました。コンラート4世には嫡子がなく、ホーエンシュタウフェン朝は断絶。その後継者問題が、大空位時代の始まりを告げます。コンラート4世在位中には対立王も存在しており、これらの争いが帝国の混乱をさらに深刻化させました。

権力真空と諸侯の台頭

ローマ王不在という状況は、帝国内の諸侯たちに大きな影響を与えました。従来、皇帝またはローマ王の権威の下に収まっていた領地や権限を、彼らは次々と掌握しようと動き出します。帝国直轄領の蚕食が進み、帝国の統治機構は弱体化。ライン都市同盟なども、勢力を拡大した諸侯によって分断されました。この時代は、単に王位が空位であっただけでなく、実質的に帝国の統治が大きく停滞した時代だったと言えるでしょう。

王位争奪と外来勢力の介入

1257年のローマ王選挙では、驚くべき事態が起こりました。帝国外から、イングランド王ヘンリー3世の弟であるコーンウォール伯リチャードと、カスティーリャ王アルフォンソ10世がローマ王候補として名乗りを挙げたのです。しかし、アルフォンソ10世は国内事情と教皇からの反対により、即位には至りませんでした。リチャードも、帝国に滞在した期間は短期間に留まりました。

一方、ボヘミア王オタカル2世は、帝国内で大きな勢力を持つ有力者として、王位獲得を目指しました。しかし、他の諸侯やローマ教皇は、オタカル2世のような強力な君主の出現を危惧していました。この状況下で、シチリア王カルロ1世は、甥のフランス王フィリップ3世を帝位につけようと画策。ヨーロッパをフランスの勢力下に置く野望を抱いていたのです。

ルドルフ1世の即位と大空位時代の終結

こうした混沌とした状況の中、1273年、ハプスブルク家のルドルフ1世がローマ王として選出されました。ルドルフ1世は当時としては弱小勢力に過ぎませんでしたが、諸侯や教皇の支持を得て王位に就いたのです。ルドルフ1世が支持された理由としては、ホーエンシュタウフェン家との遠縁関係や、過去における皇帝への忠誠心などが挙げられます。

ルドルフ1世の即位によって、大空位時代は終結を迎えます。しかし、彼はローマで皇帝として戴冠することはありませんでした。それでも、ルドルフ1世は優れた統治者として、帝国の安定化に貢献。ボヘミア王オタカル2世を軍事的に破り、オーストリアを獲得するなど、勢力を拡大しました。しかし、これによってハプスブルク家の帝国支配が確固たるものになったわけではありません。その後も、様々な勢力がローマ王位を争う時代が続きます。

大空位時代の意義

大空位時代は、神聖ローマ帝国の権力構造の脆弱性を露呈させました。皇帝やローマ王の権威が低下する一方で、諸侯の勢力が拡大。帝国全体の統一性や安定性が大きく損なわれた時代でした。この時代は、後の帝国史に大きな影響を与えた重要な転換期だったと言えるでしょう。

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