ハインリヒ4世 (ルクセンブルク伯)

ハインリヒ4世は、12世紀のヨーロッパで重要な役割を果たした人物です。彼はルクセンブルク伯（1136年 - 1196年）とナミュール伯（1139年 - 1189年）を兼ね、その生涯は領土の相続、教会との複雑な関係、結婚と離婚、そして後継者争いに満ちていました。

ハインリヒ4世は、ナミュール伯ジョフロワ1世とルクセンブルク伯コンラート1世の娘エルメジンデの間に生まれました。彼は「盲目伯」とも呼ばれ、その名の通り晩年は失明しました。ハインリヒ4世は、従兄弟にあたるデュルビュイ伯アンリ2世とラ・ロッシュ伯アンリから、それぞれの伯領を相続しました。1136年には母方の従兄弟であるルクセンブルク伯コンラート2世が亡くなり、皇帝はルクセンブルク伯領がフランスのグランプレ伯の手に渡るのを防ぐため、ハインリヒに伯位を与えました。さらに3年後には父の死によりナミュール伯位も継承し、二つの伯領を治めることとなりました。

ハインリヒ4世は、領土の拡大にも積極的でした。1141年には、ブイヨンをバル伯ルノー1世から取り戻すため、リエージュ司教アルベロン2世を支援しました。ルクセンブルク伯領の相続に伴い、彼はトリーアの聖マクシミン修道院とエヒタナハの聖ウィリブロルド修道院の代弁人（Advocatus）の地位も得ました。しかし、このことが歴代のルクセンブルク伯と同様に、トリーア大司教との確執を生むことになります。1147年には聖マクシミン修道院の権利を手放しますが、大司教アダルベロンの死後、再び取り戻しました。最終的には、1155年に新しく大司教となったヒリンがグレーヴェンマハと修道院の権利を交換することになりました。

宗教的な活動も行っており、1152年にはディナンのノートルダム・ド・レフ修道院を創設し、プレモンレの律修司祭を置きました。結婚生活においては、1157年にフランドル伯ティエリー・ダルザスの娘ローレットと結婚しますが、1163年に離婚。子供がいなかったため、妹アリックスと結婚したエノー伯ボードゥアン4世を後継者に指名しました。しかし、ボードゥアン4世が1171年に亡くなったため、甥のボードゥアン5世を後継者としました。

その後、ハインリヒ4世は1169年にゲルデルン伯ハインリヒの娘アグネスと再婚します。しかし4年後の1173年にはアグネスを実家に送り返し、別居生活を送ります。1182年には病のために失明してしまいますが、その後アグネスと復縁し、1186年に娘エルメジンデが誕生します。ハインリヒ4世は、この娘に領土を相続させようと考え、ボードゥアン5世との取り決めを解消しようと試みます。76歳になった彼は娘の婚約者としてシャンパーニュ伯アンリ2世を選びました。

しかし、この決定は後継者とされていたボードゥアン5世の不満を買い、彼は皇帝フリードリヒ1世に訴え出ます。最終的に以下のような取り決めがなされました。

ボードゥアン5世がナミュール伯領を継承
エルメジンデはデュルビュイ伯領とラ・ロッシュ伯領を継承
男子相続の領地であるルクセンブルク伯領は、男子継承者がいない場合帝国に戻され、皇帝フリードリヒ1世の子ブルゴーニュ伯オトン1世に与えられる。
シャンパーニュ伯アンリ2世はエルメジンデとの婚約を解消し、エルメジンデはバル伯ティボー1世と結婚

この結果、ハインリヒ4世の領土相続を巡る計画は大きく変更されることとなりました。また、ハインリヒ4世はリンブルフ公ハインリヒ3世との間で再び争いを起こし、1194年8月1日、ノヴィル＝シュル＝メエーニュで敗北を喫しました。

ハインリヒ4世は1196年にエヒタナハで亡くなり、ルクセンブルク伯位は一旦ブルゴーニュ伯オトン1世に与えられました。しかし、翌1197年には娘エルメジンデがルクセンブルク女伯となり、ハインリヒ4世の血筋がルクセンブルクを治めることになりました。

このように、ハインリヒ4世の生涯は、領土の相続、教会との関係、結婚と離婚、そして後継者争いに翻弄された複雑なものであり、その後のヨーロッパの歴史に大きな影響を与えた出来事でした。

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