ハウス・オブ・フレーザー

ハウス・オブ・フレーザー：イギリス百貨店史を彩る巨人

ハウス・オブ・フレーザーは、イギリスとアイルランドで60店舗以上を展開する、歴史と規模を誇る百貨店グループです。その歴史は1849年、スコットランド・グラスゴーでヒュー・フレーザーとジェームズ・アーサーが小さな服地店「アーサー・アンド・フレーザー」を開業したことに始まります。創業地はグラスゴーですが、現在では北アイルランド・ベルファストの店舗が最大規模を誇ります。

黎明期から巨大チェーンへ

当初は小さな服地店でしたが、フレーザーの優れた経営手腕とアーサーの販売戦略により、順調に成長を遂げました。1891年までは「フレーザー・アンド・サンズ」として営業。その後、20世紀初頭にかけて安定した成長を続け、第二次世界大戦後は積極的な買収戦略によって、全国規模の百貨店チェーンへと変貌を遂げます。1936年から1985年までの約50年間で、70社以上の企業を買収。この中には、Army & Navy、Beatties、Dickins & Jones、Jenners、Howells、Kendals、Rackhams、Binnsといった、イギリスを代表する百貨店が含まれます。ロンドンのオックスフォード・ストリートにあったDHエバンズも2001年にハウス・オブ・フレーザーに統合され、同社の象徴的な店舗となりました。

買収した企業は、ハウス・オブ・フレーザーブランドに統合されることが多く、独自のブランド名は消えていきました。これは、企業買収を成長戦略の中核に据えていた同社の、長期的なブランド戦略の一環と言えるでしょう。ハロッズもかつてハウス・オブ・フレーザー傘下に入っていましたが、現在は独立しています。

一方、ハウス・オブ・フレーザー自身も、BootsやLonrhoといった企業からの買収提案を受けるなど、数多くの買収のターゲットとなりました。ほとんどの提案は実現しませんでしたが、2006年にはアイスランドの投資会社Baugurによる買収が成立。その後、ロイズ・バンキング・グループが株主となるなど、その経営権は幾度となく移り変わりました。

着実な成長と戦略的買収

1849年の創業から、ハウス・オブ・フレーザーは常に変化と成長を遂げてきました。創業者のヒュー・フレーザーの優れた経営手腕と、続く世代の努力によって、小規模な服地店から、イギリスを代表する百貨店チェーンへと発展しました。

1950年代以降は積極的な買収戦略を展開。McDonalds Ltd、Scottish Drapery Corporation、Binnsグループ、John Barker & Co Ltdなどを傘下に収め、規模を拡大しました。資産売却とリースバックによる資金調達を行い、新規店舗の開設や既存店舗の近代化に投資。1950年代後半には、ハロッズやDickins & Jonesといった有名百貨店もグループに加わりました。

1970年代には、Bootsとの合併計画も検討されましたが、政府によって阻止されました。Lonrhoによる買収提案も同様に、競争上の懸念から不成立に終わっています。

1980年代には、スポーツ用品や葬儀事業など、事業多角化を図りました。Al Fayed家による買収を経て、店舗の合理化やブランド再編が進められ、ハウス・オブ・フレーザーブランドの統一が進められていきました。

2000年代には、トム・ハンターによる敵対的買収の試みがありましたが、失敗に終わっています。また、JennersやBeattiesといった地域密着型の百貨店チェーンを買収することで、顧客基盤の拡大を目指しました。同時に、アイルランドへの進出を果たし、海外市場への展開も開始。2006年には再びBaugurに買収されました。

デジタル時代への対応

近年では、オンラインストアを立ち上げ、デジタル化にも積極的に対応しています。2011年には「Buy & Collect」をコンセプトにした小型店舗を展開。タッチスクリーン端末を使った新しいショッピング体験を提供しています。伝統的な百貨店としての地位を維持しながら、現代の消費者のニーズに応えるための新たな取り組みを進めています。

まとめ

ハウス・オブ・フレーザーの歴史は、イギリス経済史と深く関わり、その成長と変遷は、時代の変化と消費者のニーズを反映しています。積極的な買収戦略とブランド再編、そしてデジタル化への対応は、現代のハウス・オブ・フレーザーを形作っています。これからも、イギリスの百貨店業界を牽引する存在として、その歴史を刻み続けることでしょう。

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