ハエカビ目

ハエカビ目 (Entomophthorales) の概要

ハエカビ目は、接合菌に属し、寄生菌が多い分野です。この分類群は、6つの科、22の属、約200もの種を有しています。接合菌綱においては最大のグループと考えられています。主に昆虫に寄生し、一部は藻類やシダ類、さらには無脊椎動物に寄生することもあります。中には脊椎動物に元を持つ病原体も存在しますが、その系統の単純性に関しては、議論の余地があります。特に知られているのはハエカビ属のEntomophthoraで、代表的な種であるE. muscaeは、一般的なハエに寄生し、宿主を死亡させることが観察されています。死んだハエが壁に付着し、その周辺に白い粉が見られる場合、それは射出された胞子である可能性が高いです。

特徴

菌糸体

この目の菌糸体は発達があまりなく、短い断片状が主です。寄生性の種では、宿主の体内で菌体が増殖し、細胞壁を持たない形態となることがあります。宿主内で成長する際、宿主を殺し、胞子の形成が行われます。しかし、宿主の体表に出ることは少なく、胞子形成に必要な柄が外部に伸びる程度です。

寄生性

ハエカビ目の種は、自由生活をする物もありますが、ほとんどが寄生性であり、内部寄生することで知られています。寄生型の菌体が宿主内で増殖し、特定の宿主に対して強い特異性を示すことの多いです。そのため、害虫の防除に応用が試みられることもあります。

胞子の形成

無性胞子は菌糸の先端で形成され、成熟すると特有の方法で放出されます。この放出は、胞子内部の圧力によるものと考えられています。胞子は一般的に宿主の表皮に付着し、その後発芽して宿主の体内に侵入します。出川によると、この胞子の形成過程は「ピョンピョン跳びはねて宿主を追う」と表現されます。これらの胞子は接合菌の中でも独特で、真の分生子と考えられています。

核の特徴

1980年代以降、細胞核の性質がこの目の分類において重要視されるようになり、特にハエカビ科の核は大きく、間期にも明確な染色体が観察されます。核小体はほとんど見られず、体細胞分裂時には核膜が消失しない特徴も持ち合わせています。

培養と系統関係

動物性成分を含む培地での培養が可能であり、接合胞子嚢を形成することから、古くから接合菌としての位置付けがされています。また、遺伝子解析から、他の菌群との系統的関連性も示されています。

分類

ハエカビ目は、複数の科に分けられますが、以下のようにまとめられます。特にバシジオボルスは独立した目と考える主張もあります。

• - Entomophthoraceae (ハエカビ科): 昆虫に寄生し、分節菌糸体を形成する。
• - Basidiobolaceae (バシジオボルス科): 自由生活、動物の糞上に見られる。
• - Completoriaceae: シダ植物に寄生、細胞壁を持たない。
• - Ancylistaceae: 寄生菌と腐生菌を含む。
• - Neozygitaceae: 昆虫に寄生し、有色の胞子を形成。
• - Meristacraceae: 微小動物に寄生する。

利害

昆虫病原体としての役割があり、害虫の防除に利用されることが模索されていますが、実施例は少なく、成功の事例は限られています。また、コニディオボルスなどの種がまれに哺乳類に寄生することが報告されています。特に、ハエカビ目は多くの研究の対象であり、そのエコロジーや応用可能性についての理解が進んでいます。

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