ハゴイ飛行場

ハゴイ飛行場：歴史と現在

ハゴイ飛行場は、北マリアナ諸島テニアン島の北部に位置する、かつて日本軍が建設した飛行場です。太平洋戦争末期には、広島と長崎への原爆投下作戦において、B-29戦略爆撃機がここから飛び立ちました。現在では、アメリカ海兵隊が管理しており、演習場として利用されていますが、その歴史的な背景から、多くの人々に知られています。

日本統治時代

1939年、ハゴイ飛行場は、横浜刑務所から派遣された「赤誠隊」と呼ばれる囚人部隊によって建設されました。完成当時は南洋諸島最大の飛行場であり、1,450メートルの滑走路を持っていました。建設に携わった囚人たちを悼む「赤誠隊殉歿者之碑」が、今もこの地に残されています。完成後、ハゴイ飛行場は日本海軍の管理下に置かれました。日本軍は、この飛行場を「北飛行場」や「牛飛行場」とも呼んでいました。

太平洋戦争

太平洋戦争開戦当初は、ハゴイ飛行場に軍用機の配備はありませんでしたが、1944年2月、トラック島空襲を受けて、第一航空艦隊に所属する七六一空の陸上攻撃機40機が進出しました。その後、米軍による空襲を受け、七六一空は壊滅的な打撃を受けました。同年6月には、マリアナ諸島侵攻に伴い、新たに派遣された零戦部隊も迎撃に飛び立つも、多くの機体が未帰還となりました。この作戦がハゴイ飛行場における日本軍最後の作戦となりました。

米軍による占領後

1944年8月、テニアン島を占領した米軍は、海軍建設大隊の働きによって、わずか2日間で飛行場を使用可能にし、さらに4本の2,590メートル級の滑走路を建設しました。米軍は、この飛行場を「ノースフィールド」と改名し、B-29戦略爆撃機を大量に配備しました。その後、グアム島、サイパン島とともに、ハゴイ飛行場は日本本土空襲の拠点の一つとなり、1945年5月には、原爆投下部隊である第509混成部隊が進駐しました。同年8月6日と9日、広島と長崎に投下された原子爆弾は、この飛行場から飛び立ったB-29によって運ばれました。

現在の状況

現在、ハゴイ飛行場を含むテニアン島北部の一部は、北マリアナ諸島政府からアメリカ海兵隊に貸し出されています。しかし、1947年以降、軍用機の配備や駐留部隊はなく、駐屯地としては使用されていません。そのため、4本の滑走路のうち、南側の2本は緑に覆われています。一方で、ハゴイ飛行場は、現在でも演習場として使用されており、米海兵隊と陸上自衛隊水陸機動団による共同訓練も行われています。近年では、中国の太平洋進出に対抗するため、アメリカ軍は飛行場の再建を検討しています。

観光地としての側面

ハゴイ飛行場の敷地は、演習時を除いて自由に立ち入ることができます。かつての滑走路には、民間人も自由に立ち入ることができ、原爆搭載機の発進地点には、リトルボーイとファットマンの保管庫が今も現存しています。保管庫内部には、1945年8月当時の写真が展示されています。両保管庫の脇には、原爆投下を正当化した碑文が刻まれた記念碑が設置されています。また、飛行場周辺には、日本海軍の司令部、通信所、発電所、弾薬庫、トーチカなどの遺構が残っており、当時の様子を垣間見ることができます。

普天間基地移設問題

2010年、テニアン市長が、沖縄の普天間基地の移設先としてハゴイ飛行場を含むテニアン島北部への受け入れを表明しました。この案は、一部の日本の政治家からも支持されましたが、日本政府や米軍の反対により、具体化には至りませんでした。

まとめ

ハゴイ飛行場は、太平洋戦争の歴史を物語る重要な場所です。日本軍によって建設され、米軍によって原爆投下作戦の拠点となったこの場所は、現在もその姿を留めています。軍事施設としての歴史と、観光地としての側面を併せ持つハゴイ飛行場は、訪れる人々に、過去の戦争の悲惨さと平和の尊さを伝えています。

参考文献

井上昌巳 『一式陸攻雷撃記』 (光人社NF文庫 1998年) ISBN 476982212X

関連項目

テニアンの戦い
広島市への原子爆弾投下
長崎市への原子爆弾投下
ウォッジェ空港
普天間基地移設問題

もう一度検索