ハゴップ・アキスカル

ハゴップ・アキスカルの生涯と業績

ハゴップ・スーレン・アキスカル（Hagop Souren Akiskal, 1944年1月16日 - 2021年1月20日）は、アメリカ合衆国を代表する医学者、精神科医です。カリフォルニア大学サンディエゴ校（UCSD）精神科教授および同大学の国際ムードセンター所長を務めました。レバノンでアルメニア人の両親のもとに生まれたアキスカルは、ベイルート・アメリカン大学で医学博士号を取得後、ウィスコンシン大学で研鑽を積みました。その後、テネシー大学にて臨床医および気分障害研究者として活躍しました。

研究者としての歩み

1972年から1990年までテネシー大学精神科教授を務め、研究者としてのキャリアを築きました。1990年から1994年の間は、米国国立精神衛生研究所（NIMH）で主任諮問委員を務め、1996年からは精神医学分野の重要な学術誌である「Journal of Affective Disorders」の編集長として、学術界に大きく貢献しました。

アキスカルは、気分障害の研究において、特に双極性障害の診断基準に対する批判的な視点を持っていました。彼は、従来の単極性うつ病と双極性障害の二分法に疑問を呈し、エミール・クレペリンが提唱した広範な躁うつ病概念への回帰を主張しました。この立場から、アキスカルは自らを「新クレペリン学派（ネオクレペリニアン）」と称しました。

軽微双極性スペクトラムの提唱

アキスカルの最も重要な業績の一つに、双極性障害のスペクトラム概念の提唱があります。彼は、双極性障害の二つの極（躁状態と鬱状態）の間に連続的に存在する、軽微な症状を伴う「軽微双極性スペクトラム（soft bipolar spectrum）」という概念を提唱しました。これは、従来の診断基準では見過ごされがちであった、軽度の躁状態や軽躁状態を含む気分障害の多様性を捉える上で重要な貢献となりました。

クレペリンへの敬愛

アキスカルは、精神医学の巨匠エミール・クレペリンを深く敬愛しており、「哲学者がプラトンに注釈を加えるように、精神科医はクレペリンに注釈を加えることしかできない」と述べています。この言葉は、アキスカルのクレペリンへの尊敬と、自身の研究がクレペリンの業績の上に築かれているという認識を強く表しています。

受賞歴と評価

2002年には、横浜で開催された第12回世界精神医学会において、精神医学分野で優れた業績を上げた研究者に贈られるJean Delay賞を受賞するなど、数多くの国際的な賞を受賞しています。アキスカルの研究は、気分障害の診断と治療において重要な影響を与え、その業績は今日でも高く評価されています。

主な研究テーマ

神経症性うつ病
境界性パーソナリティ障害
気分障害全般
双極性障害の診断基準とスペクトラム概念

参考文献

Faculty profile page at UCSD

関連項目

エミール・クレペリン
イグノーベル賞受賞者の一覧
気分障害
* 双極性障害

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