ハスドルバル (ハミルカルの娘婿)

ハスドルバル：カルタゴのヒスパニア統治者

ハスドルバル（紀元前221年没）は、第一次ポエニ戦争後のカルタゴにおいて、頭角を現した政治家であり、将軍です。彼はハミルカル・バルカの娘婿となり、その勢力を背景にヒスパニア（イベリア半島）の支配者となりました。その容姿から「美男子ハスドルバル」とも呼ばれました。

生涯と業績

ハスドルバルは、ハミルカル・バルカのヒスパニア征服に参加し、その後カルタゴ本国に戻り、ヌミディアとの戦争で勝利を収めました。紀元前229年にハミルカルが亡くなると、その部下たちはカルタゴ本国にハスドルバルを新たな司令官として派遣するように要請しました。

紀元前228年にヒスパニアに到着したハスドルバルは、卓越した政治的・外交的手腕を発揮し、カルタゴ人とイベリア人の融和に尽力しました。両者の婚姻を奨励し、自身もイベリア人の族長の娘を娶っています。

紀元前227年頃には、カルタゴ・ノウァ（現在のカルタヘナ）を建設しました。この都市は良港に恵まれ、銀山にも近かったため、ハスドルバルの支配拠点となりました。彼はカルタゴ・ノウァを拠点として支配領域を拡大し、その指揮を若いハンニバルに委ねて経験を積ませました。

征服した都市の中には、マッサリアの植民市であるヘメロスコピウム、アロニス、アリカンテが含まれており、マッサリアと同盟を結んでいたローマを刺激しました。紀元前226年、ハスドルバルはローマと条約を締結し、カルタゴの勢力圏はエブロ川を北限とすることが定められました。しかし、この条約によって、前述の3市はハスドルバルの支配下に残りましたが、エブロ川以南にある他のマッサリア系の植民市は独立を保つことになりました。

ローマとの関係と暗殺

ローマとの条約がカルタゴ本国ではなく、ハスドルバル個人によって締結されたことは、彼がカルタゴ本国からの自立を目論んでいたとする見方を生みましたが、定かではありません。ハミルカル、ハスドルバル、そしてその後継者であるハンニバルのヒスパニア支配が、カルタゴ本国の統制に必ずしも服していなかったことは事実です。

紀元前221年、ハスドルバルはカルタゴ・ノウァで暗殺されました。暗殺者は、ハスドルバルに殺された前の主君の復讐を果たそうとした奴隷だったと伝えられています。ハスドルバルの死後、ハンニバルがヒスパニアの支配者の地位を受け継ぎました。

ハスドルバルは、その政治手腕と軍事的な才能によって、カルタゴのヒスパニア支配を確立し、ハンニバルという後継者を育て上げました。彼の死は、その後の第二次ポエニ戦争に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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