ハスドルバル

ハスドルバルとは

ハスドルバル（ポエニ語: 𐤏𐤆𐤓𐤁𐤏𐤋）は、古代カルタゴでよく見られる男性の名前です。「バアルこそ我が救い」という意味を持ち、ハスドゥルバルやハシュドゥルバルとも呼ばれます。ここでは、歴史に名を残した著名なハスドルバルについて解説します。

ハスドルバル（ハミルカルの娘婿）

ハスドルバルは、紀元前270年 - 紀元前221年に生きたカルタゴの将軍で、ハミルカル・バルカの娘婿にあたります。第一次ポエニ戦争後、ハミルカルと共にイベリア半島に赴き、征服と植民地化を推進しました。紀元前228年にハミルカルが亡くなると、その指揮権を引き継ぎ、さらに勢力を拡大しました。

内政にも力を入れ、カルタゴ・ノウァ（現在のカルタヘナ）を建設し、首都としました。紀元前226年には、ローマとの間でエブロ川以北への進出をしないという盟約を結びます。その後も内政に注力しましたが、紀元前221年にケルト人の暗殺者によって命を落としました。彼の後継者には、ハミルカルの息子であるハンニバルが26歳という若さで指名されました。

ハスドルバル・バルカ

ハスドルバル・バルカは、紀元前245年 - 紀元前207年に生きたカルタゴの将軍で、ハミルカル・バルカの次男であり、ハンニバルの弟です。第二次ポエニ戦争中、兄のハンニバルの代わりにイベリア半島の指揮権を掌握しました。

紀元前218年、ハンニバルがイタリア遠征に出発する際、ハスドルバルはイベリア半島の経営を任されました。その後8年間、スキピオ・カルウス、コルネリウス・スキピオ兄弟率いるローマ軍とイベリア半島の覇権を争いました。紀元前216年、ハンニバルがカンナエの戦いでローマ軍に大勝しましたが、イベリア半島の戦況はコルネリウス・スキピオ兄弟によって劣勢となっていました。

ハスドルバルは、弟のマゴや別のカルタゴ将軍ハンニバル・ギスコからの援軍を得て戦力を再編しました。また、地元部族を買収し、ローマ軍内のイベリア兵の脱走を誘いました。これにより、カルタゴ軍は徐々に状況を好転させ、紀元前211年のバエティス川の戦いでローマ軍を破り、コルネリウス兄弟を戦死させました。

紀元前210年、大スキピオ率いるローマの援軍がイベリア半島に到着すると戦況は一変し、カルタゴ軍は敗北を重ねるようになりました。紀元前209年には、カルタゴ・ノウァが大スキピオによって攻略されます。紀元前207年、ハスドルバルはハンニバルへの援軍を届けるため、アルプス山脈を越えてイタリア半島に侵入しました。しかし、合流の前にローマ軍の二個軍団と遭遇し、メタウルス河畔の戦いで大敗を喫し、ハスドルバル自身も戦死しました。彼の首は切り落とされ、ハンニバルの陣営に投げ込まれたと伝えられています。

ハスドルバル (騎兵将軍)

ハスドルバルは、第二次ポエニ戦争においてハンニバルの部下として活躍したカルタゴの将軍です。紀元前216年のカンナエの戦いでは、カルタゴ軍左翼のスペイン・ガリア騎兵を指揮し、ローマ軍の騎兵を打ち破ることに貢献しました。その後、ローマ軍本隊の後方へ回り込み包囲を完成させ、勝利の立役者の一人となりました。

ハスドルバル・ギスコ

ハスドルバル・ギスコは、カルタゴの将軍であり、第二次ポエニ戦争においてヒスパニア戦線が劣勢になると、その増援として派遣されました。リウィウスの記述にはハミルカル・バルカの息子であるとの記述があり、また同じ戦線でハスドルバル・バルカと共同で戦ったこともあったため、両者は混同されることが多くありました。しかし、現在ではカルタゴ出身の別人であると考えられており、バルカ家の一員とはみなされていません。

その他のハスドルバル

第三次ポエニ戦争におけるカルタゴの指揮官にもハスドルバルという人物がいました。彼はスキピオ・アエミリアヌス（小スキピオ）に敗北を喫しました。

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