ハスモン・バリス

ハスモン・バリス：エルサレム神殿を守護した砦

ハスモン・バリスは、ハスモン朝時代にエルサレム神殿の丘北部に建設された要塞です。その歴史は古く、ネヘミヤが言及した「ビラー」と呼ばれる構造物が、その前身であると考えられています。

歴史

ネヘミヤが記述した「ビラー」は、神殿の丘に隣接する場所に位置していました。これは、アリステアス書簡に登場するプトレマイオスのバリス、つまりヘレニズム様式の要塞、あるいはその原型と同一視されています。マカバイ戦争の際、セレウコス朝によってこの構造物が破壊されたかどうかは定かではありません。

紀元前2世紀後半、ハスモン朝はこの要塞の残骸を再建、または再利用し、要塞兼邸宅としてハスモン・バリスを築きました。その構造は、いくつかの高い塔を持つ長方形の建物であったとされていますが、詳細は不明です。塔の一つは「ストラトーンの塔」として知られていました。

大祭司はバリスに居住し、ヨセフスの記録によれば、ヨハネ・ヒルカノス1世はエルサレムの上町にある宮殿よりも、バリスで過ごす時間を多く持っていました。バリスは神殿の丘と地下通路で繋がっており、大祭司の祭服もバリスに保管されていました。

紀元前63年、ポンペイウスによるエルサレム攻囲戦において、バリスは激戦地となり、ローマ軍の包囲によって塔の一つが崩壊しました。ヘロデ朝の時代には、ハスモン・バリスは再建され、ヘロデの支援者であったマルクス・アントニウスにちなんで、アントニア要塞と改名されました。

考古学

神殿の丘北部にあるいくつかの遺構は、ハスモン・バリスの痕跡であるとされています。考古学的な見解では、この砦はヨセフスの記述通り、神殿の丘の北西の角付近に位置していたと考えられています。しかし、この地域を管理するワクフが、神殿の丘の壁内での考古学的発掘調査を許可していないため、現時点ではバリスの正確な範囲や境界を特定することは困難です。

ハスモン・バリスは、神殿の丘を守る上で重要な役割を果たしただけでなく、ハスモン朝の権威を示す象徴でもありました。その詳細な構造や歴史は、未だ多くの謎に包まれていますが、今後の考古学的調査によって、更なる解明が期待されています。

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