神殿の丘

神殿の丘とは

エルサレム旧市街に位置する神殿の丘は、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の三大宗教にとって非常に重要な聖地です。ユダヤ教では「ハー・ハバイッツ（神殿の丘）」、イスラム教では「アル＝ハラム・アッシャリーフ（高貴なる聖所）」と呼ばれています。

この場所は、かつてユダヤ教の第一神殿と第二神殿が建てられた場所であり、ユダヤ教徒にとっては最も神聖な場所の一つです。一方、イスラム教にとっては、預言者ムハンマドが昇天した場所とされ、聖地の一つとして崇められています。現在、丘の上にはイスラム教のモスクやドームが建っており、礼拝が許可されているのはイスラム教徒のみです。

歴史

神殿の丘の歴史は、紀元前10世紀頃にソロモン王によって第一神殿が建てられたことに始まります。この神殿は紀元前587年にバビロニアによって破壊されましたが、紀元前515年に第二神殿が再建されました。しかし、西暦70年にローマ帝国によって再び破壊され、現在に至っています。

神殿があった時代、ユダヤ教徒であっても「死体の不浄」という禁忌により立ち入りが制限され、浄化には「赤い未経産牛」の灰が必要とされました。イスラム教王朝時代には、神殿の石壁の上に石垣が築かれ、その上に岩のドームなどが建てられました。

現状

1967年の第三次中東戦争でイスラエルが東エルサレムを占領して以降、神殿の丘はイスラエルの実効支配下に置かれています。しかし、国際法上イスラエルの占領は認められておらず、イスラエルは「現状維持」という妥協策をとり、イスラム教指導者による管理とヨルダン政府のワクフ管理局の権限を認めています。現在、礼拝などの宗教的行為はムスリムのみが行うことができ、ユダヤ教徒やキリスト教徒は原則禁止されています。

しかし、近年、イスラエルの宗教シオニストの間で、神殿の丘でのユダヤ教徒の礼拝を求める動きが活発化しています。2000年には、アリエル・シャロン党首の訪問がきっかけでアル＝アクサ・インティファーダが勃発し、パレスチナとイスラエルの関係は悪化しました。

2015年以降、ユダヤ人の入場が増加し、目立たない形での礼拝が黙認されるようになりました。一方で、ムスリムの入場は年齢や性別によって制限されるようになり、2019年には、ユダヤ教徒がムスリムの礼拝中に侵入する事件も発生しました。

また、「赤い未経産牛」を再興する活動も行われ、2022年にはアメリカで育てられた牛がイスラエルに輸入されました。2023年には、イスラエルの国家治安大臣が神殿の丘を訪問し、国際社会から非難を浴びました。

宗教的意義

神殿の丘は、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教にとって、それぞれの宗教的な意義を持つ場所です。ユダヤ教徒にとっては、かつて神殿があった最も神聖な場所であり、嘆きの壁で祈りを捧げます。イスラム教徒にとっては、預言者ムハンマドが昇天した場所であり、アル＝アクサー・モスクで礼拝を行います。

キリスト教徒にとっても、神殿の丘はイエス・キリストが活動した場所として、重要な意味を持っています。そのため、この場所は、今もなお、宗教的、政治的な緊張が続く場所となっています。

今後の課題

神殿の丘の現状は、宗教間の対立や政治的な駆け引きによって、非常に複雑なものとなっています。この場所の未来を考える上で、宗教的な意義だけでなく、歴史的な背景や政治的な状況も考慮に入れる必要があり、国際社会が協力して問題解決に取り組むことが求められています。



[画像1: 神殿の丘の全景]
[画像2: 岩のドーム]
[画像3: 嘆きの壁]
[画像4: アル＝アクサー・モスク]
[画像5: 神殿の丘の地図]
[画像6: 赤い未経産牛]

脚注

[1] 参考文献1
[2] 参考文献2

外部リンク

Templemount.org
New Evidence of the Royal Stoa and Roman Flames Biblical Archaeology Review
Virtual Walking Tour of Al-Haram Al-Sharif ("The Noble Sanctuary")
Mount Sifting Project

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