ハス科

ハス科（Nelumbonaceae）は、双子葉[[植物]]に属する科の一つで、現生種としてはハス属（Nelumbo）のみを含んでいます。この科に属する植物は、多年生の抽水性水草であり、代表的な種としてはハス（Nelumbo nucifera）とキバナハス（Nelumbo lutea）が挙げられます。

ハスは、その美しい花と独特な葉の形状から、古くから人々に親しまれてきました。特に、アジア地域では、宗教的、文化的な意味合いも持ち、庭園や池などで広く栽培されています。キバナハスは北米原産で、黄色い花を咲かせるのが特徴です。

以前は、ハス科はスイレン科（Nymphaeaceae）に分類されることが一般的でした。これは、葉が丸く、水面から花が咲き、日中の限られた時間のみ開花するなど、いくつかの共通点があったためです。しかし、近年の植物分類学の研究、特に分子系統解析の結果から、ハス科とスイレン科は系統的に大きく異なることが明らかになりました。

現在では、APG植物分類体系に基づいて、ハス科はヤマモガシ目（Proteales）に分類されています。この分類変更は、植物の進化における系統関係をより正確に反映したものです。

ハス科とスイレン科の具体的な違いは、以下の通りです。

• - 葉の特徴:

- ハス: 葉は水面から1m程度まで伸び、切れ込みがなく中央に葉柄がつきます。また、葉の表面は撥水性があり、水滴を弾くロータス効果が見られます。
- スイレン: 葉は水面に浮いており（浮葉）、1箇所に切れ込みがあります。また、撥水性はありません。

• - 花の構造:

- ハス: 花は葉の近くで咲き、中央には花托があります。花の色は白、ピンク、黄色に限られます。
- スイレン: 花は水面近くに咲き、複数の柱頭と雄しべが並んでいます。花の色は白、黄色に加え、赤、青、紫色などがあります。

これらの違いから、ハスとスイレンを見分けるのは比較的容易です。ハスは、葉も花も水面から高く立ち上がり、撥水性のある葉と中央に花托を持つ花が特徴的です。一方、スイレンは水面に浮かぶ葉と、水面近くで咲く多様な色の花が特徴です。

ハス科に属する植物は、その美しい姿だけでなく、水質浄化や食用としての利用価値も高く、生態系においても重要な役割を果たしています。また、古代から人々の生活や文化と深く結びついてきた植物でもあります。


参考文献

• - 矢野, 航「＜総論＞花ハスの歴史と人々との関わり」『遺伝：生物の科学』第77巻第3号、エヌ・ティー・エス、2023年、186-191頁、ISSN 03870022。

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