ハッカースペース

ハッカースペースとは

ハッカースペース（別名：ハックラボ、メーカースペース、ハックスペース）は、コンピューター、テクノロジー、科学、デジタルアート、エレクトロニックアートなどに共通の関心を持つ人々が集まり、交流し、協力して活動を行うためのコミュニティ運営のワークスペースです。

ハッカースペースの活動

ハッカースペースは、マシンショップ、ワークショップ、スタジオのような要素を備え、参加者が資源や知識を共有しながら、何かを構築し、創造する（Build and Make）ことができるオープンスペースです。自由ソフトウェア、オープンソースハードウェア、代替メディアの開発や利用も積極的に行われています。

ハッカースペースは、インフォショップ、ソーシャルセンター、成人教育施設、公立学校、大学キャンパスなどに開設されることが多いですが、活動の拡大に伴い、工場や倉庫などに移転することもあります。

1990年代には、ドイツのカオス・コンピュータ・クラブ（CCC）の活動を通じて、オープンメンバーシップを持つハッカースペースが普及しました。特に、c-baseは初期の代表的な例として知られています。2006年には、ポール・ボームがウィーンでMetalabを設立し、そのための資金調達戦略を打ち出しました。さらに、Hackerspaces.orgというハッカースペースのリスト管理コミュニティが開始され、ハッカースペースの設立と運営に関する情報が共有されるようになりました。2012年時点で、世界には700〜1100個のアクティブなハッカースペースが存在し、その数は増加し続けています。

クラウドファンディングの活用も進み、Kickstarterなどのプラットフォームを通じて、より多くの人々がハッカースペースを設立できるようになっています。

ハッカースペースの役割

ハッカースペースで行われる活動内容は多岐にわたりますが、基本的には情報共有の場として、ワークショップやプレゼンテーション、講義などが行われます。また、会員間の交流を深めるためのゲームナイトやパーティーなどの社交イベントも開催されます。

会員は、個々のプロジェクトに取り組んだり、他の会員と共同でプロジェクトを進めたりすることができます。ハッカースペースによっては、コンピュータツールや工作用具の貸し出しサービスも提供されています。

ハッカースペースにとって最も重要なのは、会員がプロジェクトを遂行するための施設と設備です。電源、コンピュータサーバー、インターネット接続は基本的な設備として提供され、工具、音響機器、プロジェクター、ゲーム機、電子回路（オシロスコープ、ピックアップなど）、電子部品、材料などの専門的な設備が用意されていることもあります。また、調理器具や食料保管場所を提供しているハッカースペースもあり、料理講座を開くこともあります。裁縫、工作、美術などの道具も、多くのハッカースペースで重要な要素となっています。

ハッカースペースの組織

ハッカースペースの運営方針は、会員によって決定されます。運営役員は、会員の中から活動に積極的に参加しているメンバーが選ばれることが多く、役員は、新しい機器の購入、新メンバーの採用、方針決定、安全基準の遵守などの役割を担います。

ハッカースペースの主な収入源は、会員からの会費ですが、外部からのスポンサーを受け入れている場合もあります。アメリカの一部のハッカースペースは、税制上の優遇措置を受けている場合もあります。

大学が主催するハッカースペースでは、会費を徴収しない代わりに、利用を学生、教職員、卒業生に限定している場合がありますが、他のハッカースペースからの訪問者の受け入れは一般的です。

経済的に困難な会員に対しては、会費の代わりにボランティア活動をすることで会員資格を認めているハッカースペースもあります。また、テック系のフリーマーケットを開催して収入を得ているハッカースペースもあります。

ハッカースペース間では、訪問者を歓迎する風習があり、アイデア、スキル、知識の自由な交換が推奨されています。特に、定期的に開催されるビルドナイトやオープンハウスでは、交流が活発に行われます。

ハッカースペースの課題

2009年には、ハッカースペースコミュニティにおける排他主義と包摂主義に関する議論が起こり、関連するパンフレットが出版されました。この議論は現在も続いています。

また、ハッカースペースの活動内容の特殊性から、建築基準や設計上の制約に抵触することがあります。例えば、アメリカのニューハンプシャー州にあるハッカースペースでは、大量の熱と排気が問題となり、一時的に閉鎖された事例がありました。

有名なハッカースペース

hackerspaces.org のwikiには、ハッカースペースの包括的なディレクトリがあります。著名なハッカースペースとしては、以下のようなものがあります。

c-base (ベルリン): 1995年に設立され、学校や大学、企業などとは独立した世界初のハッカースペースの一つとして知られています。
RaumZeitLabor (ドイツ): Trollconを主催しているハッカースペースです。
Metalab (ウィーン): 2006年に設立され、ハッカースペースの資金調達方法の先駆者として知られています。
TechShop (アメリカ): 2006年に開業した、チェーン展開する初の商業ハッカースペースです。
NYC Resistor & HacDC (アメリカ): 2007年に設立された、北米のハッカースペースです。
Noisebridge (アメリカ): 2008年に設立された、サンフランシスコのハッカースペースです。
トーキョーハッカースペース: 2009年に設立され、福島第一原子力発電所事故後にSafecast.orgのプロトタイピングが行われました。

アメリカでは、公立学校にもメーカースペースが導入され始めており、カリフォルニア州の高校が最初にメーカースペースを開設し、中学校にもそのトレンドが広がっています。

関連項目

ファブラボ
ハッカー文化
メイカーズムーブメント

参考文献

Hackerspaces.org (ハッカースペースの国際的なディレクトリ)
The Hackspace Foundation for UK Hackerspaces (イギリスのハッカースペースのための財団)
Hackerspaces, Members And Involvement (ハッカースペース、メンバー、関与に関する調査結果)
Peer Production Communities Survey (ピアプロダクションコミュニティの調査結果)
Mapping hackers: DIY community survey (ハッカーのマッピング：DIYコミュニティの調査結果)
Business models for Open Hardware and Hackerspaces (オープンハードウェアとハッカースペースのビジネスモデル)

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