ハック・ア・シャック

ハック・ア・シャック：フリースローが苦手な選手を狙う戦術

ハック・ア・シャック（Hack-a-Shaq）とは、バスケットボールにおいてフリースロー成功率の低い選手に対して、意図的にパーソナルファウルを繰り返す戦術のことです。主に、相手の得点機会を減らす目的で使用されます。

ハック・ア・シャックの誕生

この戦術は、元々ダラス・マーベリックスの監督だったドン・ネルソンが考案しました。1990年代、ネルソンは「フリースローの苦手な選手にファウルを繰り返す方が、通常のディフェンスよりも失点を抑えられる」という理論を打ち立てました。

最初にこの作戦の標的となったのは、1997年のシカゴ・ブルズに所属していたデニス・ロッドマンです。ロッドマンのフリースロー成功率は当時38%と低かったため、ネルソンは彼に対して集中的にファウルを仕掛けました。しかし、この試合でロッドマンは12本中9本のフリースローを成功させ、ネルソンの作戦は失敗に終わりました。むしろ、ネルソン率いるマーベリックスのババ・ウェルズが3分でファウルアウトするという不名誉な記録を作ってしまいました。

シャキール・オニールへの使用

1999年、ネルソンはロサンゼルス・レイカーズのシャキール・オニールに対して初めてハック・ア・シャックを実行しました。レイカーズはこの試合に勝利したものの、オニールは37本のフリースロー中13本しか成功させることができませんでした。この戦術はリーグ全体に広まり、ハック・ア・シャックという名前もシャキール・オニールから取られています。

その他の選手への使用

近年では、ドワイト・ハワード、ベン・ウォーレス、ブルース・ボウエンなど、フリースローの苦手な選手に対して同様の戦術が用いられています。特に、2016年1月20日のヒューストン・ロケッツ対デトロイト・ピストンズ戦では、ロケッツがアンドレ・ドラモンドに対してハック戦術を用い、ドラモンドは36本のフリースロー中13本しか成功させることができず、1試合で1選手が23本のフリースローをミスするというNBA記録が生まれました。

問題提起と議論

ハック・ア・シャックは、試合の流れを悪くし、観客の興を削ぐという批判があります。また、タイショーン・プリンスは「自分のチームの選手に対して失礼だ。君たちは守備ができない、と自分のチームの選手に言っているのと同じだ。」と述べています。NBAコミッショナーのアダム・シルバーは、この戦術を制限するためのルール改正を検討することを明らかにしました。

ルール改正の動き

2016年以降、NBAはハック・ア・シャックに対するルールを段階的に変更し、試合終盤での使用を制限する措置を講じています。しかし、依然としてフリースローの苦手な選手に対する意図的なファウルは存在し、議論の余地を残しています。

フィクションでの事例

井上雄彦のバスケットボール漫画「SLAM DUNK|SLAM_DUNK」にも、ハック・ア・シャックと同様の戦術が登場します。インターハイ予選決勝リーグのある試合で、主人公・桜木花道がバスケットボール歴3ヶ月足らずであることに着目した対戦相手のポイントガード牧紳一が桜木に対して試合中2度に渡り意図的にパーソナルファウルを仕掛けています。

ハック・ア・シャックは、バスケットボールの戦術における倫理的な問題や、試合のエンターテイメント性とのバランスについて、様々な議論を呼ぶテーマです。

もう一度検索