ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜

ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜

『ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜』(原題: Beasts of the Southern Wild)は、2012年に公開されたアメリカのファンタジードラマ映画で、監督を務めたのはベン・ザイトリンです。この作品は、ルーシー・アリバーが創作した舞台『Juicy and Delicious』をベースにし、アリバー自身とザイトリンが共同で脚本を手がけました。本作は、サンダンス映画祭で最高賞のグランプリと観客賞を受賞し、第65回カンヌ国際映画祭では新人監督賞を獲得するなど、数々の賞に輝きました。また、第85回アカデミー賞においては、作品賞を含む4部門にノミネートされています。

あらすじ

物語は、南ルイジアナの小さな島『バスタブ』を舞台としており、このコミュニティは独特の文化と深い結びつきを持っています。島で生活する少女ハッシュパピーは、厳格で一途な父親ウィンクと共同で過ごしながら、自然の神秘について強い信念を抱いています。彼女は、“この世界は繊細な仕組みを持ち、生きていて、宇宙の全てのものが調和を保っている”と信じているのです。

しかし、彼女の日常は急速に変わり始めます。『バスタブ』の住民たちは、自然の平穏が脅かされていることに気づいていきます。環境の変化や土地の危機が迫り、ついに100年に一度の大嵐が島を襲います。この災害により、ウィンクを含む大人たちは「堤防を壊して島の水を抜こう」と無謀な計画を立て、結果、島は壊滅状態に陥ってしまいます。ハッシュパピーは、自身が大切に思っていた自然環境が崩れ始め、大昔の凶暴な生物たちが復活してくるのではないかと恐れを抱くようになります。

そのころ、政府は島の住民を強制的に移住させる措置を取り、病院に収容します。そこでハッシュパピーは、父ウィンクの余命が少ないことを知ります。彼の強い願いを受けて、ハッシュパピーは病院を抜け出し、海の向こうにいると信じる母親を探しに向かいます。しかし、弱っていく父を見ているうちに、自らの目的が変わり、父と故郷の『バスタブ』を守る決意を新たにします。

ゲストとの出会い

ハッシュパピーは途中で謎の舟に拾われ、特異なナイトクラブに連れていかれます。そこで出会った娼婦から、父親ウィンクが語った母の得意料理・ワニの唐揚げを提供されます。その瞬間、彼女は奪われた愛情を抱え直し、同時に父親と『バスタブ』に戻ることを決意します。彼女は迫り来る猛獣たちから島を守るため、その決心を貫くのです。

キャスト

この映画には注目のキャストが揃っています。ハッシュパピー役はクヮヴェンジャネ・ウォレス、ウィンク役にはドワイト・ヘンリーが名を連ねています。彼らの演技は、物語の深さと感動を引き立てています。

制作と公開

映画の制作は、16mmフィルムで行われ、監督のベン・ザイトリンは、少数のプロスタッフや地域住民と協力して制作を進めました。共同制作チームは「Court 13」と名乗り、この作品を誇りに思っています。本作は2012年1月20日のサンダンス映画祭で初上映され、その後、同年6月27日にニューヨークとロサンゼルスで限定公開され、順次拡大公開されました。

評価

映画は批評的にも高く評価されています。Metacriticでは41媒体のレビューに基づいて加重平均86/100を得ており、Rotten Tomatoesでは172件のレビューに対する支持率が85%を記録しています。

『ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜』は、卓越したストーリー展開と深い感情を呼び起こす美しいビジュアルを持つ作品で、観客に強い印象を与えました。この映画は、自然の力と人間の結びつき、直面する困難に立ち向かう勇気を描いた、感動的なドラマとして多くの人々に愛されています。

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