ハッテラス岬

ハッテラス岬：大西洋の難所と観光地

ハッテラス岬は、アメリカ合衆国ノースカロライナ州の東端に位置する、細長い砂州状のハッテラス島東側にあります。大西洋に面したこの地は、高級リゾート地として知られるバミューダ諸島にアメリカ本土から最も近い場所です。

地理と自然

約144kmにわたり連なる島々はアウターバンクスと呼ばれ、大陸側のパムリコ湾と大西洋を隔てています。この一帯は1937年よりハッテラス岬国立海浜公園として国立公園局によって管理されています。

ハッテラス岬の沖合は、北からの寒流であるラブラドル海流と南からの暖流であるフロリダ海流がぶつかる地点であり、濃霧が発生しやすく、嵐も頻発します。そのため、古くから航海の難所として知られ、「大西洋の墓場」とも呼ばれてきました。1866年から1945年までの80年間で、排水量50トンを超える船舶だけでも約230隻がアウターバンクスの沖で難破したという記録があります。

観光スポット

かつては全米で最も高い灯台であったハッテラス岬灯台（1802年完成、塔高63m）は、海岸線の後退により水没の危機に瀕したため、1999年7月にハッテラス島の内陸へ880mほど移設されました。灯台に隣接して海洋博物館（Museum of the Sea）があり、この地域の海洋に関する歴史や文化を学ぶことができます。

2002年には、ノースカロライナ歴史博物館の分館として、ハッテラス島の南西地区に海の歴史と難破船をテーマとした「大西洋の墓場」博物館がオープンしました。ここでは、1942年にこの地で沈没したドイツの潜水艦Uボートからの回収品などが展示されています。

その他、レクリエーション施設やキャンプ場、宿泊施設も充実しており、アウターバンクスの東側（大西洋側）には白い砂浜が広がっています。海水浴、釣り、サーフィン、スキューバ・ダイビング、ハンググライダー、セーリングなど、様々なアクティビティを楽しむことができます。また、ライト兄弟が初飛行を繰り返したキティーホークおよびキル・デヴィル・ヒルズにも近いため、合わせて訪れる観光客も多いです。

世界初の遭難信号SOS

ハッテラス岬は、無線通信の歴史においても重要な役割を果たしています。1901年、アメリカ国立気象局の無線研究家レジナルド・フェッセンデンが、ハッテラス島のバックストンとそこから北へ80km離れたロアノーク島に無線実験局を建設し、通信試験を行いました。また、1902年にはリー・ド・フォレストが米国ド・フォレスト無線会社を創業し、1903年にハッテラス岬に海岸局（無線局）を建設して沖合いの船舶との無線電報の取扱いを開始しました。

1909年8月11日、ニューヨークからフロリダ州ジャクソンビルへ向かっていたクライド・ラインのアラパホ号が、ハッテラス岬沖でプロペラシャフトを破損する事故を起こしました。アラパホ号は、ユナイテッド・ワイアレス社の船舶無線局VBから無線電信で救助を求め、ユナイテッド・ワイアレス社ハッテラス岬海岸局HAおよびクライド・ラインのヒューロン号VHと連絡が取れ、全員が無事救助されました。この時、アラパホ号VBが発した遭難信号が、世界初のSOSとして記録されています。

ハッテラス岬は、その美しい自然景観と豊かな歴史、そして数々のマリンアクティビティが楽しめる観光地として、多くの人々を魅了し続けています。

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