ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン

ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン (Happiness Is a Warm Gun)

「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」は、ビートルズが1968年に発表したアルバム『ザ・ビートルズ』（通称：ホワイト・アルバム）に収録された楽曲です。レノン＝マッカートニー名義となっていますが、実質的にはジョン・レノンが中心となって作詞・作曲を手がけました。

楽曲の背景と特徴

この曲は、全米ライフル協会の雑誌に掲載された記事の見出しからインスピレーションを得て名付けられました。そのタイトルに衝撃を受けたレノンは、複数の音楽的なアイデアを組み合わせ、独特な構成を持つ楽曲を完成させました。4分の3拍子と4分の4拍子が入り組んだ複雑なリズム、そして歌詞の持つ多義性から、当時から様々な解釈がなされてきました。

レコーディングは難航し、リズム・トラックの録音には70テイクを要したと言われています。初期のデモ音源は「I Need a Fix」というタイトルで、3つのセクションで構成されていました。

歌詞と解釈

歌詞は、一見すると意味不明にも感じられますが、「温かい銃」というフレーズから、性的な欲求や暴力性、さらには麻薬への依存といったテーマが読み取れるとする解釈も存在します。レノン自身は、性的な意味合いについては認めたものの、麻薬との関連については否定しています。

曲は3つのセクションに分かれており、それぞれ異なる音楽スタイルを持っています。レノンはこれらのセクションを「the Dirty Old Man」、「the Junkie」、「the Gunman（1950年代のロックンロールの風刺）」と表現しました。この構成は、レノンの内面にある様々な感情や思考が反映されているかのようです。

レコーディング秘話

レコーディングは、1968年9月にEMIレコーディング・スタジオで行われました。メンバーは、曲の複雑な構成に対応するため、入念なリハーサルを重ねました。リンゴ・スターは、この時期のセッションについて「最終的に僕らはまたバンドに戻れた」と語っており、メンバー間の結束が再び強まった時期でもあったようです。

リリースと評価

「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」は、『ザ・ビートルズ』のA面ラストを飾る曲としてリリースされました。その斬新な構成と歌詞から、音楽評論家からは高い評価を受けましたが、同時に歌詞の性的暗示から、BBCなどの放送局では放送禁止となるなど、物議を醸しました。

しかし、その芸術性は時代を超えて評価され、現在ではビートルズの代表曲の一つとして認知されています。多くのミュージシャンによってカバーされており、トーリ・エイモス、U2、ブリーダーズなどが独自の解釈でこの曲を演奏しています。

楽曲が残した影響

「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」は、その革新的な音楽性と、社会に対するメッセージ性によって、後の音楽シーンに大きな影響を与えました。ビートルズの音楽的な実験精神を象徴する楽曲として、今もなお多くの人々に愛され続けています。

この曲は、単なるポップソングとしてではなく、芸術作品として鑑賞されるべきでしょう。聴くたびに新たな発見があり、様々な解釈が可能な奥深さが魅力です。

クレジット

ジョン・レノン - ダブルトラックのリード・ボーカル、バッキング・ボーカル、エレクトリック・ギター、オルガン
ポール・マッカートニー - バッキング・ボーカル、ベース、ピアノ
ジョージ・ハリスン - バッキング・ボーカル、リードギター
リンゴ・スター - ドラム、タンバリン

カバー・バージョン

ブリーダーズ - アルバム『ポッド』(1990)
フィッシュ - ライブ・アルバム『LIVE PHISH 13　10.31.94』(2002)
U2 - シングル『ラスト・ナイト・オン・アース』(1997)のB面
トーリ・エイモス - アルバム『ストレンジ・リトル・ガールズ』(2001)
* マーク・リボー - アルバム『Saints』(2001)

もう一度検索