ハッピーグリン

ハッピーグリン：地方競馬の至宝、中央・海外への挑戦

ハッピーグリンは、日本の地方競馬、ホッカイドウ競馬に所属しながら、中央競馬や海外レースに果敢に挑戦し続けた稀有な競走馬です。その活躍から「コスモバルクの再来」と称賛されたその生涯を紐解きます。馬名の由来は「うれしそうな笑い」。

デビュー前：800万円の小さな希望

2015年生まれのハッピーグリンは、セレクトセール当歳セッションで800万円という低価格で取引されました。184頭中181番目という低い評価でしたが、後に育成担当者はその潜在能力の高さを語っています。

2歳時：才能の片鱗と挫折

デビュー前の馴致では、担当者から「走っている時に地面を感じさせない。全身がバネのようだ」と評されるほど、抜群の芝適性を見せていました。能力試験ではゲートでの逸走にも関わらず、驚異的な末脚で2着馬を抜き去るなど、高いポテンシャルを秘めていることが示されました。

5月のデビュー戦では、単勝2.3倍の1番人気に応え見事勝利。その後も、数々の有力馬と競り合い、JRAコスモス賞への出走権を獲得するなど、活躍を続けました。しかし、北海道2歳優駿や全日本2歳優駿では思うような結果を残せず、才能の片鱗を見せつつも、課題を残す一年となりました。

3歳時：地方馬の意地、中央競馬制覇への挑戦

他の有力馬が南関東や中央競馬に移籍する中、ハッピーグリンは道営に留まり、異例の挑戦を続けました。3歳を迎えたハッピーグリンは、年明け緒戦で東京競馬場にて地方馬として実に10年ぶりとなる勝利を収め、「コスモバルクの再来」と大きな話題を呼びました。

続く皐月賞トライアルのスプリングステークスやダービートライアルのプリンシパルステークスでは惜しくもクラシック挑戦を逃しましたが、その後もSTV賞やOROカップで勝利を重ね、マイルチャンピオンシップへの出走権を目指し富士ステークスに出走するなど、活躍は続きます。

満を持して挑んだジャパンカップでは、最低人気ながらも好タイムで7着と健闘。有馬記念への登録もありましたが、出走は叶いませんでした。しかし、その年の活躍が評価され、NARグランプリ最優秀ターフ馬に選出されました。

4歳以降：海外遠征と中央への転厩

4歳以降は、JRA認定の効力が切れることによりレースの選択肢が制限される中、馬主は地方競馬を盛り上げるため、道営在籍のまま中央への挑戦を続けました。香港遠征ではクラウドファンディングによる支援も話題を呼びました。しかし、古馬となってからは思うような成績を残せず、2019年にはJRA栗東トレーニングセンターの長谷川浩大厩舎へ転厩。その後は思うような結果を残せず、2021年4月、JRAの競走馬登録を抹消、岩手競馬に移籍しました。しかし、故障により現役を引退、ホーストラスト北海道で余生を送ることとなりました。

エピソード：道営の坂路と同期馬たち

ハッピーグリンは、道営の屋内坂路で鍛え上げられ、冬期間も移籍せずに中央に挑戦した初めての馬でした。これは馬主の「道営の坂路なら中央に負けない馬作りが出来る」という信念によるものです。

同世代には、アーモンドアイやステルヴィオ、ブラストワンピースといった中央競馬で活躍した馬たちがおり、ハッピーグリンもまた、地方競馬のレベルの高さを示す存在として、その名を刻みました。

ハッピーグリンの物語は、地方競馬の競走馬が中央や海外に挑戦し続けることの困難さと、その挑戦を支える人々の情熱、そして地方競馬の可能性を示す、感動的な物語でした。その功績は、長く記憶に残るでしょう。

もう一度検索