ハディージャ・ビント・フワイリド

ハディージャ・ビント・フワイリド：イスラーム黎明期を支えた女性

ハディージャ・ビント・フワイリド（555年? - 619年）は、イスラーム教の預言者ムハンマドの最初の妻であり、イスラームの歴史において非常に重要な人物です。彼女は、ムハンマドが預言者としての使命を自覚し、イスラームを広める上で、精神的、経済的に大きく貢献しました。

商人としての成功とムハンマドとの出会い

ハディージャは、クライシュ族の名門アサド家に生まれました。彼女は若い頃に二人の夫と死別し、莫大な財産を受け継ぎ、自ら交易商として活躍しました。当時、ムハンマドはハディージャの親戚の代理人として交易に携わっており、その誠実で信頼できる人柄にハディージャは惹かれました。595年、ハディージャが40歳、ムハンマドが25歳前後の時に二人は結婚しました。

ムハンマドの精神的な支え

ハディージャとの結婚により、ムハンマドは経済的な安定を得て、瞑想に没頭する時間を持てるようになりました。610年、ムハンマドはヒラー山で天使ジブリールから最初の啓示を受けますが、その内容に困惑し、不安を感じて帰宅します。ハディージャはムハンマドを優しく励まし、彼女のいとこであるキリスト教の修道僧ワラカ・イブン・ナウファルに相談することを勧めました。ワラカはムハンマドがモーセやイエスと同じ預言者であると見抜き、ムハンマドに預言者としての自覚を促しました。ハディージャはムハンマドの言葉を信じ、最初のイスラム教徒となりました。

イスラーム初期への貢献

ハディージャは、イスラームの教えを広めるムハンマドを物心両面から支え続けました。彼女の財産は、貧しい人々の救済やイスラーム共同体の維持に役立てられました。また、彼女はムハンマドに対する精神的な支柱であり続け、彼の決意を支え、困難な状況を乗り越える勇気を与えました。

悲しみの年とハディージャの遺産

619年頃、ハディージャは亡くなりました。同じ年には、ムハンマドの保護者であった叔父のアブー＝ターリブも亡くなり、ムハンマドは大きな悲しみに暮れました。この年は「悲しみの年」として知られています。ハディージャの死後、マッカにおけるクライシュ族の迫害は激化し、ムハンマドがメディナへ移住（ヒジュラ）する一因となりました。

ハディージャは、ムハンマドとの間に二人の息子と四人の娘をもうけましたが、息子たちは夭折しました。娘の一人であるファーティマは、後の第4代カリフとなるアリーと結婚し、ムハンマドの血筋はファーティマの子孫によって受け継がれていきました。

ハディージャは、イスラームの黎明期において、ムハンマドを支え、イスラームの発展に大きく貢献した女性でした。彼女の信仰心、慈愛、そして勇気は、今日でも多くの人々に感銘を与え続けています。

関連項目

寡婦 / 再婚
マッカ
* クライシュ族

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