ハニートラップ 大統領になり損ねた男

『ハニートラップ 大統領になり損ねた男』（原題：Welcome to New York）は、2014年に公開された、アメリカ合衆国とフランス合作のドラマ映画です。アベル・フェラーラ監督がメガホンを取り、主演はフランスを代表する名優ジェラール・ドパルデューと、英国出身のベテラン女優ジャクリーン・ビセットが務めています。

この映画は、2011年にニューヨークで起きた、当時国際通貨基金（IMF）専務理事だったドミニク・ストロス＝カーンのレイプ未遂事件を題材としています。ストロス＝カーンは、フランス大統領選の有力候補と目されており、その事件は世界中を震撼させました。映画では、この事件を基に、政治家の欲望、権力、そして人間関係の複雑さを深く掘り下げています。

映画は、2014年5月に第67回カンヌ国際映画祭でコンペティション外作品として初上映されました。その後、アメリカでは2015年3月27日にニューヨーク限定で劇場公開と同時にインターネット配信が開始され、フランスでは劇場公開されず、インターネット配信のみとなりました。日本では、2015年1月にWOWOWシネマで放送されたほか、劇場公開やDVD発売も行われました。

物語は、ジェラール・ドパルデュー演じる、次期フランス大統領選への立候補を予定する大物政治家、デヴローに焦点を当てています。デヴローは、公言するほどの女好きで、毎晩のように派手なパーティー三昧の生活を送っています。そんな彼がある日、ニューヨークのホテルで清掃係の女性に性的暴行を試みたとして逮捕されます。

妻シモーヌ（ジャクリーン・ビセット）は、夫の大統領就任を夢見て彼を支えてきました。逮捕の報に接したシモーヌは激しく動揺しますが、夫を救うべくニューヨークに飛んでいきます。デヴローは保釈されますが、自宅軟禁となり、夫婦の生活は大きく変化します。

軟禁生活の中で、デヴローはシモーヌに、自分が大統領を望んでおらず、妻の強い野心に押しつぶされそうになり、そのストレスから性依存症になったと告白します。また、今回の事件によって、初めて自由になれたと感じていると打ち明けます。

最終的に証拠不十分で起訴は見送られますが、シモーヌはデヴローを許すことができず、二人は別れる道を選びます。真相は明かされないまま、映画は幕を閉じます。

映画全体を通して、政治家の私生活のスキャンダルや、権力闘争の裏側、夫婦間の複雑な関係などがリアルに描かれています。ジェラール・ドパルデューの演技は圧巻で、政治家の脆さと人間の深淵を表現しています。ジャクリーン・ビセットも、野心的な妻を熱演し、作品に深みを与えています。

Rotten Tomatoesでは批評家の76%が高評価、Metacriticでも平均点71点と高い評価を得ており、批評家からも高い評価を得ています。この映画は、政治スキャンダルを題材とした社会派ドラマとして、多くの観客や批評家から注目を集め、記憶に残る作品として評価されています。

この映画は、単なるスキャンダルの再現ではなく、人間の複雑な感情や葛藤をリアルに描いた、見応えのある作品です。政治に興味のある方だけでなく、人間ドラマに興味のある方にもおすすめです。

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