性依存症

性依存症について

性依存症（せいいぞんしょう、英: sexual addiction）は、性行動に過度に依存してしまう状態を指します。一般的には「セックス依存症」と呼ばれることが多いですが、その依存性は性交渉だけにとどまらず、自慰行為、売春、乱交、露出行為、覗き行為、性的いたずら電話、さらにはインターネット上のアダルトコンテンツまで幅広く及びます。もちろん、ポルノグラフィ（例：児童ポルノを含む）に依存してしまうことは、ポルノ依存症と呼ばれます。

概要

性依存症の兆候としては、性行為への強迫観念や過度な時間を費やしてしまうこと、または性行為への衝動が伴う羞恥心や不安、さらには危険な性行為を行ったり、信頼関係を損なったりする行動が挙げられます。特に、他者に危害を加える可能性のある行為やストーカー行為、性暴力といった重篤な事例も存在します。+

ただ、性依存症といっても、単に性欲が強いだけでは成立しません。あくまで自分や他者に深刻な苦痛をもたらす場合が対象です。性依存症は男性に多く見られますが、性別や性的指向を問わず、誰でも陥る可能性があります。

科学的見地

性行動に依存する状態は、科学的には確立されたものではありません。この分野の研究は未だ進行中であり、性依存症を精神疾患として見るべきか否かについても意見が分かれています。2016年には、アメリカの性教育者団体が「セックス依存症やポルノ依存症を精神疾患として分類するのに十分な証拠はない」との声明を発表しました。

診断基準

国際的な基準であるWHOのICD-11では、性依存症の明確な診断名は存在せず、「強迫的性行動症」として分類されています。この疾患は、強い衝動に駆られて性的行動を繰り返し、6カ月以上続くことで、日常生活に悪影響を及ぼす状態です。ただし、思春期の性的関心や薬物の影響による行動は診断されません。

原因

性依存症の原因は多岐にわたり、解明されていません。既存の研究では、気分障害（うつ病や双極性障害など）、不安障害や人格障害、さらには衝動制御障害との関連が示されています。ある研究では、性依存症の人の72%が気分障害を抱えており、38%が不安障害との関連があるというデータもあります。また、トラウマや薬物乱用、認知症の問題も考えられています。

治療法

治療方法としては、性行動に対する衝動を管理するために、薬物治療や認知行動療法が採用されています。また、アルコホーリクス・アノニマス（AA）に類似した匿名の自助グループも存在します。こうした自助グループでは、参加者はニックネームを用いて、個人情報を明かさずに互いの回復を支え合います。日本でも、首都圏から始まりつつある自助グループが全国各地に広がっています。

著名な事例

過去に性依存症を公言した著名人には、ビル・クリントン元米国大統領や俳優のデビッド・ドゥカブニー、タイガー・ウッズの不倫スキャンダルに端を発し、性依存症の概念が広まったことが挙げられます。

性依存症をテーマにした作品

性依存症が題材の映画やドラマも多く存在します。例えば、映画『ブラック・スネーク・モーン』や『ニンフォマニアック』など、また日本ではドラマ『サイコドクター』などが該当します。これらの作品は、性依存症の持つ複雑さと、その影響を描いたものです。水戸岡の漫画『セックス依存症になりました。』は自身の体験を基に描かれており、治療や自助グループの様子が描写されています。

まとめ

性依存症は、多様な性的行動への過度な依存を伴い、個人や社会に影響を及ぼす問題です。科学的な了解は十分ではありませんが、治療や支援の枠組みは徐々に整いつつあります。

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