ハニー・フィッツ

ハニー・フィッツの歴史

ハニー・フィッツは、アメリカ合衆国大統領専用のヨットとして、特にジョン・F・ケネディに親しまれてきました。この船の名前は、ケネディの母方の祖父、ジョン・F・フィッツジェラルドから取られています。

船の始まりと経歴

このヨットは1931年に建造され、シーウェル・アベリーの注文によってミシガン州ベイシティのデフォー造船で作られました。最初は「レノア」という名で、アベリーの娘の名前に由来していました。彼はミシガン湖近くのヒューロン湖畔のレ・シェノー諸島に邸宅を持ち、そこでこの船を利用していました。

船の歴史は第二次世界大戦に入ると大きく変わります。1942年にアメリカ沿岸警備隊に売却され、「CG-92004」と改名されました。戦時中には、主にニューヨーク州の沖合で監視や潜水艦乗組員の訓練に使用され、1943年に改装されました。

戦後の1945年には、沿岸警備隊からアメリカ海軍に引き渡され、ワシントンD.C.の海軍施設で大統領専用ヨットとしての役割を果たすようになりました。この際、ハリー・S・トルーマン大統領は船名を「レノアII」に改名し、主にウィリアムズバーグという別の大統領専用ヨットの補助船として利用することとなります。

大統領たちとの関わり

その後、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領のときに、ウィリアムズバーグが退役したことを受け、ハニー・フィッツはメインの大統領専用ヨットとして利用され始めました。このとき、船名も「バーバラ・アン」と改められ、アイゼンハワーは家族とのバカンスにこの船を使用しました。

次に大統領となったジョン・F・ケネディは、母方の祖父の愛称を取って「ハニー・フィッツ」と命名し、海軍の経歴を持つ彼自身は、この船で多くの家族旅行を楽しみました。ケネディは船を利用して様々な場所に出かけ、イギリスの首相ハロルド・マクミランが乗船した際の重要な会談もここで行われました。また、1961年には、日本の首相池田勇人が訪米した際に招待され、いわゆる「ヨット会談」が実施されました。

ケネディの暗殺後、リンドン・B・ジョンソンが大統領になりましたが、彼は名前の改名を行わず、主に宴会場として利用していました。次の大統領であるリチャード・ニクソンは、この船を「パトリシア」と改名しましたが、あまり使われず、1970年4月に船は売却される運命となります。最終的にはジョセフ・キーティングが購入し、船体を元のケネディ時代の姿に復元しました。

現在、ハニー・フィッツは再びこの名前で運航されており、チャーターサービスなどにも利用されています。このように、ハニー・フィッツはただの舟ではなく、アメリカの歴史に深く根ざした重要な存在であり続けています。

もう一度検索