ハネオレホソバエ

ハネオレホソバエ科（Strongylophthalmyiidae）

ハネオレホソバエ科は、ハエ目（双翅目）に属する昆虫の一群です。世界中で約2属55種が確認されており、その多様性は東南アジアなどの東洋区に集中しています。しかし、ヨーロッパから日本を含む旧北区、ニューギニア、オーストラリアなど、様々な地域にも生息しています。

概要

これらのハエは、体長が2.5mmから5.5mm程度の小型で、細身の体型が特徴です。スマートな胴体とやや扁平な球形の頭部、そして細く長い脚を持ちます。体表は細かい毛で覆われていますが、目立つ剛毛は少なく、全体的に光沢があります。体色は、頭部から胸部、腹部にかけて黒っぽい色合いが多く、頭部前端や脚は淡黄色を帯びることが一般的です。また、脚には部分的に褐色の環が見られることもあります。

翅は細長く、透明なものから明瞭な斑紋を持つものまで存在します。斑紋がある場合、翅の先端が黒くなっていたり、中央付近に黒い帯状の紋が現れるパターンがよく見られます。

形態

• - 体長: 2.5-5.5mm程度
• - 体型: スマートで華奢
• - 体色: 頭部から胸・腹は黒っぽく、頭部前端と脚は淡黄色
• - 翅: 細長く、透明または斑紋あり

生態

ハネオレホソバエ科の生態は、まだ十分に解明されていません。しかし、いくつかの種については、幼虫が樹皮下で生育することが知られています。例えば、ウスホシハネオレバエやS. pictipesの幼虫はポプラの伐採木、S. stackelbergiの幼虫はニレやカバの樹皮下で育ちます。これらの幼虫は湿った靱皮部を好み、樹皮のすぐ下で蛹化します。

北米に生息するS. angustipennisとS. pengellyiは、アメリカヤマナラシを利用していることが確認されています。これらの種は、成虫が樹表で見られ、S. angustipennisの幼虫は樹皮下から発見されています。また、S. pengellyiの成虫は、キトスポラ属の菌に冒された樹表を舐めたり、産卵管で探ったりする行動が観察されています。さらに、キクイムシ科の甲虫が開けた穴に強い関心を示すことから、これらの菌類や甲虫類が彼らの生活環において何らかの役割を果たしている可能性が示唆されています。

オーストラリアでは、クワズイモ属の葉上に成虫が、ニューギニアではバナナの葉上に成虫が見られます。ニューギニアの個体は、アリに擬態している可能性も指摘されています。

日本の種

日本には、以下のハネオレホソバエが生息しています。

• - マダラハネオレホソバエ (Strongylophthalmyia caliginosa)
• - ミナミハネオレホソバエ (Strongylophthalmyia crinita)
• - ヤマトハネオレホソバエ (Strongylophthalmyia japonica)
• - Strongylophthalmyia paula
• - Strongylophthalmyia stackelbergi
• - ウスホシハネオレバエ (Strongylophthalmyia ustulata)
• - Strongylophthalmyia sp.1
• - Strongylophthalmyia sp.2

これらの種は、報告例が比較的少ないものの、自然が残る環境で確認されることが多いです。ミナミハネオレホソバエは、東京都心部の皇居や自然教育園からも記録されています。

分類

ハネオレホソバエ科は、現在Nartshukia属とStrongylophthalmyia属の2つの属に分類されています。Strongylophthalmyia属は、単眼瘤の位置が顕著に前方に寄っていることが特徴です。

人間との関わり

これまでのところ、ハネオレホソバエ科の種と人間との直接的な関わりは特に確認されていません。しかし、これらのハエは自然環境の指標となる可能性があり、その生態や分布を調査することは、生物多様性の保全に繋がると考えられます。

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