クワズイモ

クワズイモ（Alocasia odora）の詳細

クワズイモは、サトイモ科クワズイモ属に分類される常緑性の多年草です。その大きな葉は、時には人が傘として使えるほどに成長します。観葉植物としても人気があり、アロカシア（またはアローカシア）という名前で親しまれることもあります。

形態

クワズイモは、サトイモのように塊状ではなく、棒状に伸びる根茎を持っています。この根茎は地表を這うように成長し、先端から数枚の大きな葉をつけます。草丈は個体差が大きく、膝丈ほどのものから背丈を超えるものまで様々です。葉は楕円形で、長さは60cmにも達し、波状の鋸歯を持っています。葉の基部は心形に深く切れ込みますが、葉柄はわずかに盾状につきます。葉柄は長く、60cmから1mを超えることもあり、緑色で先端に向かって細くなります。

花は初夏から夏にかけて、葉の陰にひっそりと咲きます。仏炎苞は基部が筒状で緑色、先端は楕円形でやや大きく、内側に抱え込むように立ち上がり、緑から白へと変化します。花穂は筒部から出て、黄色がかった白色をしています。果実が熟すと仏炎苞は脱落し、果実が目立つようになります。

分布

クワズイモは、中国南部、台湾、インドシナ半島、インドなどの熱帯・亜[[熱帯]]地域に分布しています。日本では、四国南部から九州南部、そして琉球列島にかけて自生しています。長崎県五島市の八幡神社にあるクワズイモは、国の天然記念物に指定されています。沖縄県や鹿児島県の奄美群島では、道路脇や庭先、生垣などで普通に見られ、低地の森林では林床を覆うこともあります。

近縁種

日本には、クワズイモの近縁種として、やや小型のシマクワズイモや、より大型のヤエヤマクワズイモなどが自生しています。しかし、観葉植物としてよく見かけるのは、海外原産の種が多いでしょう。例えば、インド原産のインドクワズイモ、緑の葉と白い葉脈のコントラストが美しいアマゾンクワズイモ、ビロードのような光沢を持つグリーンベルベットクワズイモなどが人気です。

毒性

クワズイモの名前は「食わず芋」に由来します。見た目がサトイモに似ているものの、食用には適しません。シュウ酸カルシウムを含むため、皮膚や粘膜を刺激し、誤って食べると中毒症状を引き起こす可能性があります。切り口から出る汁にも注意が必要です。日本では、サトイモやハスイモの茎と間違えて誤食する事故が後を絶ちません。東京都福祉保健局は、クワズイモを毒草に分類しています。

しかし、興味深いことに、中国では腹痛や赤痢、ヘルニアなどの治療薬として、また、ベトナムでは風邪の治療薬として利用されることもあります。

文化面

クワズイモにまつわる伝説も存在します。弘法大師（空海）が訪れた地で、村人が「石芋」と呼ばれる食べられない芋を焼いていたという伝説が各地に残されています。この伝説では、弘法大師が芋を所望したものの、村人は食べられないと断り、大師が去った後に食べようとすると、石のように硬くなって食べられなかった、という話です。この「石芋」は、サトイモの一種である可能性が高いですが、高知県や愛媛県では、クワズイモが「石芋」であるという説も存在します。


クワズイモは、その美しい外観とは裏腹に、毒性を持つという一面も持っています。観賞用として楽しむ際には、誤食しないように注意が必要です。また、古くから薬として利用されてきた歴史も持ち、その多様な側面が魅力的な植物です。

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