ハバブ

シリア南部ハバブ町：緑の草原から現代社会へ

シリア南部のハウラーン平原に位置するハバブ町は、ダマスカスから南へ約57キロメートル、ダルアー県の中心都市ダルアーからもほぼ同距離に位置する静かな町です。かつてはアラム語で「緑の草原」を意味するアビバと呼ばれていました。

気候と自然

ハバブの気候はシリア南部特有の穏やかな気候ですが、冬には寒波に見舞われ、夏は高温になります。はっきりとした四季があり、夏の昼間の暑さも乾燥した夜風のおかげで快適です。年間降雨量は250ミリメートルに満たず、気温は最低-4℃から最高38℃まで変化します。

住民と文化

ハバブの町には約8,000～10,000人が暮らしており、夏には帰省する住民が増えます。しかし、海外に移住した住民は約4,000人に上り、フランス、アメリカ合衆国、カナダ、ブラジル、オーストラリア、アラブ諸国などに散らばっています。住民の大半はメルキテ・ギリシャ・カトリック教会の信徒であり、聖マリア大聖堂など4つの教会が町の歴史を物語っています。これらの教会は老朽化していますが、現在修復作業が進められています。

町の主要言語はアラビア語ですが、フランス語も使われており、教会の典礼ではギリシャ語が使われます。近年では英語の普及も進んでいます。

経済と農業

伝統的に農業が生活の基盤でしたが、近年は農業への依存度は低下しています。農業は天水に頼っており、収穫量は降雨量に大きく左右されます。小麦、大麦、レンズ豆などの天水作物に加え、トマト、スイカ、ニンジンなどの野菜やブドウ、オリーブ、アーモンドなどの果樹も栽培されています。

多くの人々は雇用者となり、月々の給料が主な収入源となっています。しかし、商工業が盛んな地域への移住や、若者のダマスカスなどの大都市、あるいは湾岸地域、欧米、オーストラリアへの海外移住も増加しています。そのため、若い世代は伝統的な農業にほとんど関心を示さなくなっています。

教育と社会基盤

ハバブの識字率はシリア国内でも高い水準にあります。大司教や修道院の尽力により、町だけでなく周辺の村落にも教育が普及しています。町には幼稚園1校、初等学校2校、中等学校4校の計7校があります。

公共施設も充実しており、診療所、建設中の病院、中央電話局、農民組合、農業指導所、警察署、高速道路警察署などが整備されています。また、公営の小売店、パン工場、役場、スポーツクラブ、社交文化クラブ、鉄道駅、そして様々な商店が並ぶ市場もあります。公園の整備も計画されています。シリアとヨルダンを結ぶ国際高速道路も近くを通っており、交通の便も良好です。

ハバブ町は、伝統と現代が交錯する、変化の途上にある町です。かつての「緑の草原」の面影を残しつつ、新たな発展を模索し続けています。

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