ハプログループN (mtDNA)

ハプログループNは、分子人類学において、人類のミトコンドリアDNA（mtDNA）の系統を分類する際に用いられる用語です。このハプログループは、ハプログループL3から分岐したもので、「8701, 9540, 10398, 10873, 15301」という特定の遺伝子変異によって定義されます。ハプログループNは、ハプログループMとともに、アフリカを出て世界各地へ広がった人々の祖先を辿る上で重要な役割を果たしています。

アフリカを出た人類は、ハプログループMとNに分かれ、それぞれ異なる地域に広がっていきました。ハプログループMは、西ユーラシアにはほとんど見られないものの、インドでは優勢です。一方、ハプログループNは、ヨーロッパや西アジアで主要なグループとなっています。この分布の違いから、ハプログループNへの分岐がアフリカ内で起きたのか、それともアフリカを出た後に起きたのかという議論が続いています。

ハプログループNは、さらに多くのサブグループ（子系統）に分かれています。以下にその主なものを挙げます。

N1: この系統は「I」というさらに細かいサブグループを含みます。
N2: この系統は「W」というサブグループを持ちます。
N9: この系統は東アジア、東南アジア、中央アジアに広く分布する「N9a」と、日本や沿海州で見られる「N9b」を含みます。
Y: オホーツク海沿岸地域に特有の系統です。
A: 東アジア、中央アジア、北アジア、そしてアメリカ先住民にも見られる系統です。
S: この系統の詳細はさらに研究が必要です。
X: ヨーロッパ、中東、北アフリカ、そして北米先住民に見られる系統です。
R: この系統はさらに多くのサブグループを含んでいます。
R0 (FMKA pre-HV):
HV:
H: ヨーロッパや北アフリカで優勢な系統です。
V:
pre-JT or R2'JT:
JT: この系統は「J」と「T」というサブグループを含みます。
R9:
F: 東アジアや東南アジアに見られる系統です。
R11'B:
B: 東アジア、東南アジア、オセアニア、そしてアメリカ先住民に見られる系統です。
P: この系統の詳細はさらに研究が必要です。
U (formerly UK): この系統は「U8」を含みます。
U8:
K: この系統は広範囲に分布しています。
* O: この系統の詳細はさらに研究が必要です。

これらのサブグループは、それぞれ異なる地域や民族集団に見られ、人類の拡散の歴史を解き明かす上で重要な手がかりを提供しています。ハプログループNの研究は、人類の移動ルートや人口動態を理解する上で不可欠であり、分子人類学の分野で引き続き重要な研究対象となっています。

ミトコンドリアDNAは、母系遺伝をするため、ハプログループNの分布を調べることで、母系の祖先を辿ることが可能です。ハプログループNの多様なサブグループは、人類の歴史における様々な分岐点を示しており、私たちのルーツを探る上で、貴重な情報源となっています。

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