ハプログループU (mtDNA)

ハプログループUは、分子人類学においてミトコンドリアDNA（mtDNA）のハプログループの一つとして分類されています。このハプログループは、ハプログループRの下位系統であり、特定の変異、具体的には「11467, 12308, 12372」という位置の変異によって定義されます。

起源と年代

ハプログループUの起源は、およそ43,000年から50,000年前（95%信頼区間：46,530 ± 3,290年前）と推定されています。この年代は、分子時計に基づいた分析によって算出されたもので、人類の歴史における重要な時期と重なります。

分布

ハプログループUは、東ヨーロッパ、中央アジア、西アジア、南アジア、北アフリカ、アフリカの角といった広範な地域に分布しています。特にヨーロッパでは、人口の約11%がこのハプログループに属しています。インドでは、カースト制度における上位カーストの約15%、指定部族の約8%にハプログループUが見られます。さらに、ハプログループUの中でもU6は、ベルベル人の間で特に多く見られる特徴的なタイプです。ハプログループUは、形質人類学的にコーカソイドとされる人々に多く見られる傾向があり、父系ハプログループであるハプログループI（Y染色体）やハプログループJ（Y染色体）と対になる母系タイプと考えられています。

古代DNA

古代DNAの解析においても、ハプログループUは重要な役割を果たしています。紀元前1000年紀のエジプト、アブシール遺跡から発掘されたミイラから、ハプログループUのmtDNAが検出されました。さらに、2015年の研究では、13,000年前のスイスのクロマニョン人から、ハプログループU5b1h (mtDNA) が発見されました。また、24,000年前のシベリア、マルタ・ビュレット遺跡の人骨からは、ハプログループUの未解明の下位系統が検出されています。

これらの古代DNAの発見は、ハプログループUが古代から広範囲に分布していたことを示唆しており、人類の移動や歴史を解明する上で貴重な手がかりとなっています。ハプログループUは、分子人類学において、人類の母系遺伝的なルーツを辿るための重要な指標の一つと言えるでしょう。

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