ハメンクブウォノ10世

ハメンクブウォノ10世は、1946年4月2日にジョグジャカルタで生まれました。彼はジョグジャカルタ王朝のスルタンであり、1989年に即位しました。また、1998年からはジョグジャカルタ特別州知事も務めています。彼の父であるハメンクブウォノ9世は、インドネシア独立に協力的な姿勢を示し、その功績からジョグジャカルタは特別な地位を与えられ、スルタンが世襲で知事を務めることとなりました。

ハメンクブウォノ10世は、ガジャ・マダ大学（UGM）で法学を学びました。その後、インドネシア・ビジネス協会の会長やスポーツ委員会の委員長などを歴任し、1996年からはジョグジャカルタ特別州知事顧問を務めました。彼は父の遺志を継ぎ、インドネシアのナショナリズムの精神的支柱として活動し、1998年の学生デモを支援するなど、民主化運動にも積極的に関わりました。

1998年に、当時の特別州知事であったパクアラム8世が健康上の理由で引退すると、ハメンクブウォノ10世が後任として選ばれました。当初、後任の知事は選挙で選出される予定でしたが、州議会や市民からの強い要望により、実質的にはハメンクブウォノ10世が選任されることとなりました。2003年からはパクアラム9世を副知事に任命し、州政を運営しています。2008年には一時、知事職を辞任する意向を示しましたが、大統領令により任期が延長されました。彼は2009年の大統領選挙にも出馬しましたが、落選しています。

2012年、インドネシア政府とジョグジャカルタ特別州政府との間で合意が成立し、特別州知事の地位が再び世襲制となる法律が制定されました。ハメンクブウォノ10世は現在もクラトン（王宮）に住み、ジョグジャカルタの発展に尽力しています。

ハメンクブウォノ10世は、王家の伝統であった一夫多妻制を廃止し、女性の権利拡大を推進していることでも知られています。彼は王妃ヘイマスとの間に5人の娘をもうけましたが、男子の嫡子がいないため、スルタン位の継承問題が懸念されています。

彼の娘たちはそれぞれ重要な役割を担っています。長女のプンバユンはソロ王家の末裔と結婚し、次女のツォンドロキロノ、三女のマドゥレトノ、四女のハユ、五女のベンダラもそれぞれ社会活動に携わっています。

日本との関係も深く、1991年には平成の天皇（現上皇）がジョクジャカルタを訪問し、午餐会が開催されました。2008年には、日本インドネシア友好50周年とジャワ島中部地震復興支援に対する感謝のため、大阪、京都、神戸を訪問しました。京都府はジョグジャカルタ特別州と姉妹都市関係にあり、文化芸術交流を深めるための活動が行われています。2023年には、今上天皇（徳仁）がジョクジャカルタを訪問した際、ハメンクブウォノ10世は天皇を歓待しました。長女のグスティー・プンバユン王女は日本コナモン協会の協力を得て、ジョグジャカルタでたこ焼き屋を開業し、雇用創出にも貢献しました。

ハメンクブウォノ10世は、インドネシアの伝統と近代化を融合させ、社会変革を推進するリーダーとして、国内外から尊敬を集めています。

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