ハモンディア

ハモンディア(Hammondia)について

ハモンディアは、アピコンプレックス門に位置する寄生性原生生物で、特にコクシジウムに属する生物の一種です。この記事では、主にそのタイプ種であるHammondia hammondiについて詳しく解説します。

生活環

ハモンディアの生活環は、トキソプラズマと非常に似ていますが、いくつかの重要な違いがあります。ハモンディアは、ネコ科の動物が終宿主となり、小動物、特に齧歯類が中間宿主になります。特筆すべきは、中間宿主と終宿主の間で厳密な宿主交代（ obligate heteroxeny）を行う点です。つまり、中間宿主への感染源は、終宿主の糞便中に排出されるオーシストに限られます。また、終宿主への感染は、中間宿主の体内に形成されるシストの摂取によって引き起こされます。

ハモンディアは、終宿主の体内では小腸内に限って増殖し、全身的な組織移行は行いません。このため、病原性が低いことが特徴です。一方、中間宿主では全身で増殖が見られるものの、トキソプラズマのような経胎盤感染は起こりません。実験では、スポロゾイトやタキゾイトが哺乳類の培養細胞に感染することは確認されていますが、すぐにブラディゾイトに移行し、このブラディゾイトは哺乳類の培養細胞への感染能力がありません。このため、ハモンディアはトキソプラズマと異なり、哺乳類の培養細胞で持続的に養殖することは難しいです。

形態

ハモンディアの未成熟オーシストは約11μmの亜球形で、薄い壁を持つのが特徴です。3日ほどで成熟し、10×13μmの楕円体の形状になり、内部に2個のスポロシストとそれぞれ4個のスポロゾイトを持つイソスポラ型オーシストになります。スポロシストのサイズは長さ10μm、幅6.5μmで、スポロゾイトは長さ7μm、幅2μm程度です。

分布

ハモンディアはアメリカ、ドイツ、オーストラリア、日本などで確認されていますが、世界的な分布はまだ十分に解明されていません。有病率は比較的低いですが、ネコには病原性を示しません。対照的に、マウスに対しては病原性を示すことが知られています。人間に感染する事例は報告されておらず、霊長類に対する感染実験でも病原性が確認されていません。

分類

この寄生生物は、アピコンプレックス門の真コクシジウム目肉胞子虫科に属します。トキソプラズマに非常に近縁で、免疫系において交差反応を示すことが知られています。トキソプラズマ属に分類する意見も存在しますが、一般的には独立した属として認められています。

現在知られている2つの種には、以下のものがあります。
1. Hammondia hammondi
- イエネコを終宿主とする。
2. Hammondia pardalis
- パナマ運河地域のオセロットから単離された。
- オーシストは大型でIsospora felisに似る。中米のネコ科動物から同様のオーシストが見つかっていますが、詳細な研究は行われていません。

過去にはH. heydorniとH. triffittaeも知られていましたが、分子系統解析の結果、Heydornia属に分類されるようになりました。

歴史

ハモンディアの研究は1971年に始まり、アイオワ州で捕獲された野良猫の糞便から分離されました。この猫はトキソプラズマを単離するためにプレドニゾロンを投与されていました。ハモンディアの属名および種小名は、コクシジウム類の研究者であるDatus M. Hammondに敬意を表して命名されています。

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