ハリエニシダ

ハリエニシダ（針金雀児）

ハリエニシダ（Ulex europaeus）は、マメ科ハリエニシダ属に分類される常緑低木です。原産地は西ヨーロッパからイタリアにかけてですが、世界中に移入され、日本にも外来種として定着しています。

名称の由来

和名の「ハリエニシダ」は、同じマメ科のエニシダに似ていること、そして葉が変化した鋭い棘を持つことに由来します。英名では一般的に「gorse（ゴース）」と呼ばれますが、「furze（ファーズ）」という別名もあります。

属名の Ulex は、ラテン語の古名「ulex（棘のある常緑低木）」に由来し、種小名の europaeus は「ヨーロッパの」という意味を持ちます。

分布

原産地は西ヨーロッパからイタリアにかけてです。しかし、スペイン、ポーランド、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、コスタリカ、ペルー、ウルグアイ、日本、中国、インドネシア、スリランカなど、世界各地に移入分布しています。イギリスでは、主に西部に分布するものがゴース、東部に分布する Ulex minor がファーズと呼ばれています。

特徴

形態: 高さ1.0-2.5mほどの常緑低木で、緑色の鋭い棘が特徴的です。幼木には3-5枚の小葉がありますが、成長するにつれて葉も棘へと変化します。
花: 開花時期は初春と秋で、2.0-2.5cmほどの鮮やかな黄色の蝶形の花を咲かせます。
種子: 種子はアリによって運ばれ、分布を広げます。
生育環境: 日当たりの良い牧草地、低木林、樹園地、海岸、荒地、水路、湿地などに生育します。

外来種としての問題点

ハリエニシダは、繁殖力の強さと駆除の難しさから、2000年に IUCN （国際自然保護連合）によって「世界の侵略的外来種ワースト100」に選定されています。日本では外来生物法により要注意外来生物に指定されています。

牧草地に侵入すると、鋭い棘が家畜を傷つける原因となります。また、棘があるため手作業での除去が困難であり、火入れや除草剤による駆除も、埋土種子や根からの旺盛な繁殖力によって効果が限定的です。ヤギによる天敵導入も試みられていますが、ヤギ自体が侵略的な外来種となる可能性があるため、慎重な管理が必要です。

オーストラリアでの事例

オーストラリアでは、放牧用の垣根として導入されたものが野生化し、問題となっています。

日本での事例

日本では観賞用として導入され、1886年には小石川植物園で栽培されていた記録があります。最初の野外定着は1950年の横浜市で確認され、現在では本州（神奈川県、和歌山県、島根県）や四国に分布を拡大しています。

文化との関わり

ハリエニシダは、イギリスの昔話『三匹の子豚』に登場し、二番目の子豚がハリエニシダ（furze）で家を建てます（木の家とする説もあります）。また、児童文学『クマのプーさん』では、プーさんが蜂蜜を取ろうと木に登り、枝が折れてハリエニシダの茂みに落ち、棘だらけになる場面が描かれています。

参考文献

* 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、92 - 93頁。ISBN 4-12-101834-6。

もう一度検索