ハリヨ

ハリヨ（針魚）について

ハリヨ（Gasterosteus aculeatus subsp.）は、日本固有の淡水魚に属し、トゲウオ科に分類されています。この魚は全長5cm前後と小型で、主に清浄な湧水地や、それに近い河川の生態系に生息しています。種の分類については、過去に異なる学名が与えられた経緯があり、特にカリフォルニアに住む個体群と異なる進化を遂げたと考えられていますが、正式な学名はまだ決まっていません。

分布

ハリヨの生息地は歴史的には滋賀県、岐阜県、三重県に広がっていましたが、現在ではその生息範囲は大幅に縮小しています。現在確認されている個体群は、滋賀県の東部と岐阜県の西濃エリア、さらには岐阜平野の湧水地のみです。特に岐阜県の養老山地から流れ出す津屋川がハリヨの生息地として知られていますが、1950年代には三重県での個体は絶滅してしまいました。滋賀県米原市では、他のトゲウオ科の陸封性イトヨとの交雑が進み、ハリヨがほぼ姿を消してしまったことが確認されています。また、近年では兵庫県にも生息が確認されていますが、これは移入によるものと考えられています。

形態

ハリヨは全体的に平たい体型をしており、木の葉のような形状が特徴です。背中には3本の棘条が分かれており、腹部分にも2本、尻びれの近くに1本の棘があります。皮膚には鱗がなく、胸びれの周囲に特有の鱗板が存在します。この鱗板は成長とともにその数が増加します。色彩は若いメスや未成熟な個体が黄褐色を呈するのに対し、成熟したオスは青緑色になり、特にのどから腹部にかけて橙色の婚姻色を発現します。

生態

ハリヨは、清浄な湧水を好み、そのため水温が低い環境に生息しています。20℃を超える水温では生存が難しく、好適な環境は水深20-50cmの浅いところに水草が生えている地帯です。同属のイトヨには回遊する個体群が存在するのに対し、ハリヨは淡水域のみで生活を完結することが特徴です。その食性は肉食性で、主に小型の甲殻類や水生昆虫を捕食します。生殖期は3月から5月にかけて活発に行われ、オスは縄張りを作り、巣を作ってメスを誘います。オスは産卵後も巣を守ることで、卵の生存を助けますが、寿命は短く、通常1-2年で終わります。

保全状態

ハリヨは環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類（CR）に指定されており、その生息環境の悪化が問題視されています。特に、開発による湧水地の減少や水質汚染が影響を及ぼしており、各自治体では保護活動が行われています。また、いくつかの生息地は天然記念物として保護されており、捕獲が条例で禁止されている場合もあります。地域の小学校や団体による清掃活動なども行われており、ハリヨの生息場所を守るための努力も続けられていますが、密漁による減少も深刻な課題となっています。

ハリヨは日本独自の生物なので、その保存と保護に向けた取り組みは非常に重要な課題です。生息環境を守ることで、彼らの未来を担保することができるでしょう。

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