ハリー・ダリアン

ハリー・ダリアン

ハリー・ダリアン（Harry Daghlian, 1921年5月4日 - 1945年9月15日）は、アメリカの物理学者で、第二次世界大戦中のマンハッタン計画において、原子爆弾の設計と製造に携わりました。彼は、ロスアラモス国立研究所での臨界実験中に事故に遭い、放射線被曝により25日後に亡くなりました。この事故は、人類史上初の臨界事故による死亡例として記録されています。

生涯

1921年、ハリー・ダリアンはコネチカット州ウォーターベリーで生まれました。彼はハーバー小学校とバルクリー高校で教育を受け、1938年にマサチューセッツ工科大学に入学しました。当初は数学を専攻するつもりでしたが、次第に物理学、特に素粒子物理学に興味を持つようになります。その後、インディアナ州のパデュー大学に転校し、1942年に理学士号を取得しました。大学院に進学後、1944年にはマンハッタン計画に参加し、ロスアラモス研究所のオットー・フリッシュの研究チームに加わりました。

臨界事故

1945年8月21日、ダリアンは臨界実験中に事故に見舞われました。彼は、プルトニウム製の炉心にタングステンカーバイドのレンガを積み重ね、手動で中性子反射板を組み立てようとしていました。中性子反射板は、プルトニウムが臨界状態に達するために必要な質量を減らす役割を果たします。ダリアンは、最後のレンガを炉心に近づけた際、誤ってそのレンガを炉心の中央に落としてしまいました。この時、炉心はほぼ臨界状態にあり、レンガが加わったことで、瞬時に臨界状態に達し、事故が発生しました。

ダリアンは、すぐにレンガを取り除こうとしましたが、うまくいきませんでした。最終的に、レンガの一部を崩すことで、臨界状態を止めることができました。しかし、彼はこの事故で、推定5.1シーベルトの中性子線を浴びていました。放射線被曝による症状は重く、昏睡状態に陥り、事故から25日後に死亡しました。事故後、彼の火傷を負った手の写真が残されています。彼の遺体は、ニューロンドンのシダーグローブ墓地に埋葬されました。

ダリアンの事故は、史上初の臨界事故による死亡例となりました。この事故で使用されたプルトニウムとガリウムの合金でできた炉心は、後に「デーモン・コア」と呼ばれるようになります。彼の死は、原子爆弾開発の裏で起こった悲劇を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

もう一度検索