デーモン・コア

デーモン・コアについて

デーモン・コア（Demon Core）は、アメリカの核兵器開発プロジェクト「マンハッタン計画」の一環として製造された未臨界のプルトニウムの塊です。このコアは直径89mm、重さは6.2kgであり、主に日本への原爆投下のために準備されていましたが、1945年8月に日本が降伏したことにより、実験用として使用されることになりました。ニュークリア・リサーチの一環として、ロスアラモス研究所での実験中に2度の致命的な臨界事故が発生し、コアは「デーモン・コア」という名称で知られるようになりました。

デーモン・コアの設計

デーモン・コアは、プルトニウム・ガリウム合金で構成され、赤外線の冷却リングを介して中性子の漏出を抑える設計がなされていました。トリニティ実験において使われたコアにはこの冷却リングは存在しませんでしたが、デーモン・コアは爆縮核としての機能を果たすために慎重に設計されていました。しかし、使用中に外部要因により反応度が上昇し、臨界点に達する危険性があり、そのため安全マージンは限られていました。

初めての臨界事故

1945年8月21日、物理学者ハリー・ダリアンが中性子反射体を用いた臨界実験を行っていた際、プルトニウムの球体に炭化タングステンのブロックを置いていたところ、ブロックが過剰に近づくことで臨界状態に達しました。結果的に、この瞬間に大量の中性子が放出され、ダリアンは致死量の放射線を浴びてしまいました。その後25日間の闘病の末に彼は命を落としました。

第二の臨界事故

1946年5月21日にはルイス・スローティンが中心となり、新たな実験が行われました。ベリリウムの半球を用いてデーモン・コアとの距離調整を試みていたが、スローティンが低下したマイナスドライバーを誤ると、コアとベリリウム半球が接触し、再び臨界状態に入りました。この事故によってスローティンは大量の放射線を浴び、わずか9日後に死亡することとなります。この緊急事態は、他の研究者たちを危険にさらしましたが、スローティンは最前線で実験を実施していたため、彼に大きなダメージが加わる結果となりました。

医学的研究と影響

これらの事故を受けた健康影響の研究が行われ、1951年に報告書が発表されました。中性子線による被曝が及ぼす影響についての調査が進められ、一部の関係者に後遺症やがんの発症が見られるなど、長期的な健康リスクが指摘されました。

クロスロード作戦とその後

デーモン・コアは、当初クロスロード作戦の実験に利用される予定でしたが、両回の事故を受けて、その使用は見直されました。新たなコアが用意される一方で、デーモン・コアは最終的に溶解され、他のコアの材料として再利用される運命となりました。

結論

デーモン・コアは、核開発の歴史の中において非常に重要かつ悲劇的な役割を果たしました。これらの事故は、核物質の取り扱いや臨界安全に関する深い教訓をもたらし、後の核実験及び安全対策に大きな影響を与えました。この歴史を忘れず、核エネルギーの取り扱いに慎重さが求められることを再確認する必要があります。

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