ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1

『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』は、2010年に公開されたファンタジー映画であり、J.K.ローリングによる同名小説を原作とした二部作の前編です。監督はデヴィッド・イェーツ、脚本はスティーヴ・クローヴスが担当しました。この作品は、ハリー・ポッター映画シリーズの第7作目にあたり、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』（2009年）の続編として位置づけられています。

物語の中心となるのは、ハリー・ポッター、ロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャーの3人です。彼らは、アルバス・ダンブルドアから託された、ヴォルデモート卿の不死の秘密である分霊箱を探し、破壊するという使命を遂行しようとします。ダニエル・ラドクリフがハリーを、ルパート・グリントがロンを、そしてエマ・ワトソンがハーマイオニーをそれぞれ演じています。撮影は2009年2月から2010年6月にかけて行われました。

この映画の大きな特徴の一つは、原作の膨大な内容を忠実に映像化するために、シリーズ初の試みとして前後編に分割された点です。これにより、従来は上映時間の制約からカットされていた原作の重要なエピソードやディテールが、多く映像に取り入れられることになりました。また、原作者であるJ.K.ローリング自身が製作に直接携わった初めての劇場版作品でもあります。

当初、本作は2D上映のみが予定されていましたが、後に3D上映も決定しました。しかし、『PART1』では3D変換が間に合わず、結果として2D版のみの上映となりました。一方、『PART2』では2D版に加え、3D版（IMAX 3Dを含む）も上映されています。

あらすじ

物語は、ヴォルデモート卿がデス・イーターたちを率いてマルフォイ邸で会合を開く場面から始まります。ヴォルデモート卿は、ハリーを無力化するためにルシウス・マルフォイの杖を奪い使用します。しかし、ハリーの杖とヴォルデモートの杖は「兄弟」であり、ハリーの杖に対して無力であることが判明します。一方、ハリーたちは不死鳥の騎士団によってロンの家に移送される計画を実行します。

「七人のポッター作戦」では、仲間たちが薬でハリーに変身し、囮となることでハリーを守ろうとします。しかし、移動中にデス・イーターの襲撃を受け、マッド-アイ・ムーディとハリーの相棒のフクロウ、ヘドウィグが命を落とし、ジョージが負傷します。ハリーたちは辛くも逃げ延び、ビル・ウィーズリーとフラー・デラクールの結婚式の準備を進めます。

結婚式の最中、魔法省の陥落と大臣の死が告げられ、デス・イーターが襲撃を開始します。ハリー、ロン、ハーマイオニーはグリモールド・プレイス十二番地に避難し、そこでシリウスの弟、レギュラス・ブラックがヴォルデモートからロケットを盗んだR.A.B.であること、そしてそのロケットがドローレス・アンブリッジの手に渡っていることを知ります。3人は魔法省に潜入し、ロケットを取り戻しますが、混乱の中でデス・イーターに追われ、森へ逃げ込みます。

ヴォルデモート卿の分霊箱を破壊するため、3人は旅を始めます。ハリーはロケットの破壊を試みるも失敗。ハーマイオニーは、バジリスクの毒が染み込んでいるグリフィンドールの剣でなければ分霊箱を破壊できないと考えます。分霊箱の魔力に影響を受けたロンは、ハリーとハーマイオニーに嫉妬し、激しい言い争いの末、2人の元を去ります。

ハリーは、最初のクィディッチの試合で捕まえたスニッチに「私は終わる時に開く」というメッセージが隠されていることに気付きます。ハーマイオニーは、『吟遊詩人ビードル』に記された記号がルーナの父ゼノフィリウスが身につけているものと同じだと気づきます。ハリーとハーマイオニーはゴドリックの谷で剣を探しますが、そこには奇妙な記号も存在していました。

老歴史家バチルダ・バグショットに迎えられた2人は、そこで杖職人グレゴロビッチから杖を盗んだ男の写真を見つけます。突然、バチルダはヴォルデモートの蛇、ナギニに姿を変え襲い掛かります。ハーマイオニーの魔法でなんとか逃げ延びるも、ハリーの杖は破壊されます。ハーマイオニーは、写真の男が闇の魔法使いグリンデルバルドだと特定します。

ある夜、雌鹿の守護霊に導かれたハリーは凍った池に飛び込みますが、首のロケットに首を締められます。そこにロンが現れ、グリフィンドールの剣でハリーを救い、ロケットの分霊箱を破壊します。ロンは灯消しライターによって、2人の場所へ導かれたのでした。

3人はゼノフィリウスを訪れ、記号が「死の秘宝」を表していることを知ります。死を免れるための秘宝、蘇りの石、透明マント、そして最強の杖であるニワトコの杖の存在が語られます。しかし、ゼノフィリウスはデス・イーターを呼び、ルーナと引き換えにハリーを渡そうとします。3人は逃げますが、人さらいに捕まります。ハリーはグリンデルバルドがヴォルデモートにニワトコの杖はダンブルドアと一緒に埋葬されていると伝える幻視を見ます。

マルフォイ邸で、ベラトリックスがグリフィンドールの剣を人さらいが持っていることに激怒し、ハリーとロンは地下牢に閉じ込められ、ハーマイオニーは拷問を受けます。地下牢でハリーは助けを求め、ドビーが現れ、一行は脱出に成功します。しかし、ドビーはベラトリックスの投げたナイフによって命を落としてしまいます。

一方、グリンデルバルドから情報を得たヴォルデモートはダンブルドアの墓からニワトコの杖を手にし、ハリーとヴォルデモートの最後の決戦への準備が整いました。

スタッフ

監督：デイビッド・イェーツ
製作：デイビッド・ヘイマン、デイビッド・バロン、J・K・ローリング
原作：J・K・ローリング
脚本：スティーブ・クローブス
音楽：アレクサンドル・デプラ

キャスト

ダニエル・ラドクリフ（ハリー・ポッター役）
ルパート・グリント（ロン・ウィーズリー役）
エマ・ワトソン（ハーマイオニー・グレンジャー役）

撮影

本作は『PART2』と連続して撮影され、監督のデヴィッド・イェーツは本作を「現実的」で「ロードムービー」と表現しています。原作を二分割にするというアイデアは製作総指揮のライオネル・ウィグラムから提案され、原作に忠実な映画化を可能にしました。

美術セット

スチュアート・クレイグが美術監督を務め、前作までとは異なる雰囲気を作り出しています。特に、結婚式のシーンでは「上品」で「手作り感」を排除したセットを制作し、魔法省のセットでは現実の省庁を参考にしています。マルフォイ邸は「力強い建築セット」として、エリザベス女王時代の邸宅を基に設計され、不気味で脅威的な雰囲気を醸し出しています。

衣装

衣装デザイナーのジェイニー・ティーマイムは、フラー・デラクールのウエディングドレスが議論を呼びました。このドレスは、不死鳥をモチーフに「愛の象徴」としてデザインされています。

視覚効果

ダブル・ネガティブ社が主要な視覚効果を担当し、デス・イーターの煙の視覚効果やゼノフィリウス・ラブグッドの家の拡張など、さまざまなシーンで高度なVFX技術が使われました。フレームストア社は動物CGや『三人兄弟の物語』のアニメーションを担当しました。

音楽

アレクサンドル・デスプラが本作の音楽を担当し、ニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズの楽曲も使用されています。

マーケティング

公開前に、公式写真や映像、ティーザーポスターが公開され、映画に対する期待を高めました。キャラクターポスターや予告編も公開され、多くのファンを魅了しました。

公開

試写会では好意的な評価を得ましたが、原作を忠実に映画化したために、原作自体の問題を引き継いでいるという意見もありました。3D版の公開は技術的な理由により中止され、2D版のみでの公開となりました。プレミア上映はロンドンで行われ、世界中からファンが集まりました。

映像ソフト

DVD、Blu-ray、Blu-ray 3Dが発売され、削除されたシーンや特典映像が収録されています。日本では、複数のバージョンが発売され、ファンのニーズに応えました。

評価

興行収入

深夜上映ではシリーズ最高の記録を更新し、初日興行収入もシリーズ最高を記録しました。北米では初週週末興行収入もシリーズ最大となりました。海外でも高い興行収入を記録し、全世界で9億7710万ドルの興行収入を上げました。

批評家の反応

Rotten Tomatoesでは77%、Metacriticでは65点という評価を得ました。多くの批評家は、映像の美しさや感情的な満足度を評価しましたが、物語の展開が遅いという意見もありました。

受賞歴

アカデミー賞では美術監督賞と視覚効果賞にノミネートされ、英国アカデミー賞では視覚効果賞とメイクアップ賞にノミネートされました。

テレビ放映

テレビ放映では、高い視聴率を記録しています。

その他

本作は、ハリー・ポッター映画シリーズの完結編である『PART2』への重要な橋渡しとなる作品です。多くのファンにとって、この作品はシリーズの中でも特に印象的なものの一つとなっています。

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