ハルキエリア

ハルキエリア：カンブリア紀の海に生きた謎の生物

ハルキエリア（学名：Halkieria）は、約5億3300万年前から約5億1100万年前、古生代カンブリア紀中期の海に生息していたとされる生物です。その化石は世界中の同時期の地層から発見されており、特異な形態が研究者の興味を引いています。

発見と歴史

ハルキエリアの化石研究は、1967年にデンマークのボーンホルム島で発見された鱗片の化石が、Poulsenによって「Halkieria obliqua」と命名されたことに始まります。その後、世界各地で鱗片の化石が発見されましたが、その生物全体の姿は長らく不明でした。

1989年にシリウス・パセットで発見された化石に基づいて、1990年にSimon Conway MorrisとJohn S. Peelによって詳細な研究報告がなされ、H. evangelistaとして報告されたことで、ハルキエリアの全体像が明らかになりました。

生物としての特徴

ハルキエリアは、前後が丸みを帯びた長方形、まるで現代の薬剤カプセルのような形をしており、全身が多数の鱗片で覆われています。最大の特徴は、体の前後にそれぞれ一つずつ「貝殻」のような構造を持っていたことです。

Conway Morrisらは、この「貝殻」が合わさることで腕足動物が誕生したのではないかという大胆な仮説を提唱しました。しかし、ハルキエリアよりも約2000万年後の地層から、「貝殻」を1枚だけ持つオルソロザンクルス(Orthrozanclus)が発見されたことから、この仮説の可能性は低くなったと考えられています。

また、鱗片を持つことに加え、歯舌（摂食のための器官）を持つ化石も確認されています。このことから、ハルキエリアはウィワクシア(Wiwaxia)と近縁であり、単系統のHalwaxiida綱（和名未定）を構成すると考えられています。さらに、歯舌の存在から、オドントグリフス(Odontogriphus)との関連性も指摘されています。

種について

ハルキエリアの種は、そのほとんどが鱗片の化石に基づいて報告されています。様々な形態の鱗片が存在することから、複数の種が存在したと考えられていますが、詳細な分類は今後の研究が待たれます。

進化における位置づけ

ハルキエリアは、カンブリア爆発と呼ばれる生物の多様性が急速に拡大した時期に生息していました。その特異な形態は、当時の生物進化の多様性を示す一例として重要です。腕足動物の起源との関連性や、ウィワクシアとの系統関係など、ハルキエリアの研究は、カンブリア紀の生物進化を理解する上で重要な手がかりとなります。

参考文献

土屋健『生物ミステリーPRO エディアカラ紀・カンブリア紀の生物』 技術評論社 2013年 ISBN 978-4-7741-6084-9

関連項目

シリウス・パセット動物群
絶滅した動物一覧#カンブリア紀（5億4,200万～4億8,830万年前）

外部リンク

ハルキエリア(Halkieria)・川崎悟司イラスト集 - ウェイバックマシン（2003年12月9日アーカイブ分）

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