ハロルド・デムゼッツ

ハロルド・デムゼッツの経歴と影響

ハロルド・デムゼッツ（Harold Demsetz、1930年5月31日 - 2019年1月4日）は、アメリカの著名な経済学者で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の名誉教授でした。彼の経歴は多岐にわたり、シカゴ学派の流れを受け継ぎながら新制度派経済学の発展に大きく寄与しました。

経歴

デムゼッツは中欧や東欧からの移民の子孫として生まれ、シカゴのウェスト・サイドで育ちました。彼は複数の大学を経て、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で経済学の学士号を1953年に取得。その後、ノースウェスタン大学でMBA（1954年）、さらにPhD（1959年）を取得し、その間に『エコノメトリカ』や『Journal of Political Economy』に論文を発表しました。

デムゼッツは、1958年から1963年までミシガン大学とUCLAで教鞭を執り、1963年から1971年までシカゴ大学経営大学院で教えていました。1971年に再びUCLAの経済学部に戻り、1978年から1980年には学部長を務めました。1986年から1995年までは経済学の寄付講座「アーサー・アンデルセンUCLA同窓会ビジネス経済学講座」を担当し、その後も海軍分析センターやフーヴァー研究所の客員として活躍しました。

彼は、その業績が認められ、1991年にはアメリカ芸術科学アカデミーのフェローに選出されました。また、1994年にはノースウェスタン大学から人文学の名誉学位を受賞し、1996年にはグアテマラのフランシスコ・マロキン大学からも名誉学位を授与されるなど、多くの栄誉に恵まれました。

思想

デムゼッツは、経済学におけるシカゴ学派の影響を色濃く受けており、新制度派経済学の幹事的な存在の一人です。特に、彼は経営の経済学における先駆者とされ、法と経済学の分野で広く使われている財産権の理論を深化させました。彼が主に影響を受けたのは、フランク・ナイトやロナルド・コース、ジョージ・スティグラーらの多岐にわたる著名な学者たちです。

彼の研究の中でも特に重要だったのは、汚染物質の排出に関する経済的インセンティブを企業に与えるという視点です。デムゼッツは、この領域で排出取引の提案をした初の経済学者とされ、彼の著作には企業理論や反トラスト法、事業規制に関する重要な見解が多数あります。彼の論文スタイルは、説明的で数式を少なく使用するもので、これは当時の経済学者の中では例外的であったと言われています。

特に1972年には、アーリン・アルキアンとの共著で発表した「Production, Information Costs and Economic Organization」が高く評価され、アメリカ経済学レビューの創刊100周年を祝う重要な文献の一つに選ばれました。

おもな論文・著書

デムゼッツの代表的な著作には次のようなものがあります。

• - 1967: "Toward a Theory of Property Rights," American Economic Review.
• - 1968: "Why Regulate Utilities?" Journal of Law and Economics.
• - 1972: (with Armen Alchian) "Production, Information Costs and Economic Organization," American Economic Review.
• - 1988: The Organization of Economic Activity（2巻）。

このように、ハロルド・デムゼッツの業績は今も多くの研究や実務に影響を与えており、彼の理論や洞察は経済学の発展において重要な位置を占めています。

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