ハワイ・マウイ島山火事

ハワイ・マウイ島山火事（2023年）

2023年8月8日から数日間にわたり、アメリカ合衆国ハワイ州マウイ島で未曽有の大規模山火事が発生し、甚大な被害をもたらしました。この災害は、アメリカ国内で発生した山火事としては、過去100年間で最悪のものとなりました。島西部の歴史的な港町ラハイナは市街地の大部分が焼け野原となり、壊滅的な被害を受けました。公式に確認された死者は102人に上り、住宅を中心に2200棟を超える建物が損壊しました。連邦政府はハワイ州に対し、大規模災害宣言を発出しました。

背景

原因

火災の発生原因については、複数の要因が指摘されていますが、特に電力会社の設備が火元となった可能性が強く疑われています。ハワイアン・エレクトリック・インダストリーズ（HEI）の損傷した送電線から火花が発生したという見方があり、事前に強風が予測されていたにもかかわらず、電力供給を停止する計画停電を実施しなかったことが問題視されています。カリフォルニア州などでは同様のリスク回避策が実施されています。複数の法律事務所やマウイ郡当局は、強風下での送電継続が火災を招いたとしてHEIを相手取った訴訟を起こしていますが、同社側は火災発生の数時間前には送電を停止していたと主張しています。

気象状況

火災発生 당시、マウイ島では異常な乾燥と記録的な強風という極めて危険な気象条件が重なっていました。ハワイ諸島北の高気圧と南西を通過していたハリケーン・ドーラとの間に生じた大きな気圧差が、時速130キロにも達する猛烈な突風をもたらしたと考えられています。また、非常に乾燥した空気が流れ込み、湿度が著しく低下していました。これらの気象状況が、火災の発生・延焼リスクを劇的に高める要因となりました。

経過

火災は8月8日未明、内陸部のマカワオ付近で最初の火の手が上がりました。その後、午前中には約40キロ離れた西海岸のラハイナでも別の火災が発生しました。ラハイナの火災は市街地を巻き込み、多数の犠牲者が出ました。正午には再び内陸部のクラ地区でも火災が発生するなど、複数箇所で同時進行的に延焼が拡大しました。

ラハイナでは、朝発生した小規模な火災が一旦は鎮火したと発表されたものの、猛烈な突風により再び燃え上がり、急速に市街地を飲み込んでいきました。この火災により、歴史的な街並みを持つラハイナの大部分が破壊されました。しかし、その中で1846年に建てられたマリア・ラナキラ・カトリック教会が無傷で残ったことも報じられました。

火災発生前の数日間にも、ハワイ諸島では小規模な山火事が複数発生しており、消防のリソースが逼迫していました。気象当局は8月7日には既に「重大な火災気象状況」となる可能性を警告していました。

影響

この山火事による経済的損失は甚大で、ラハイナだけで55億2000万ドル、島全体では70億ドル（約1兆190億円）に上ると推計されています。主要な観光地であるラハイナの壊滅は、マウイ島の経済の柱である観光業にも大きな打撃を与えました。ハワイ州はマウイ島西部への不要不急の訪問を控えるよう要請しましたが、観光収入への依存度が高い地元経済への不安も広がっています。

また、火災原因の可能性が指摘されている電力会社HEIは、複数の訴訟に直面しており、関連企業の業績にも影響が出ています。

反応

アメリカ国内

連邦政府は災害対応を強化し、復興には多大な費用が見込まれています（ラハイナ再建だけで55億2000万ドルと推計）。ハワイ州政府は火災対応と原因究明に関する包括的な調査を開始。ジョシュ・グリーン州知事は今回の災害を「最悪の自然災害」と表現しました。ジョー・バイデン大統領夫妻も被災地を訪問し、支援を約束しました。

ラハイナへの火災接近時に、防災当局が警報サイレンを鳴らさなかったことに対する批判が高まり、マウイ郡緊急事態管理局長が辞任しました。局長は津波避難用のサイレンであり、山火事の状況では市民を高所に誘導してしまうため鳴らさなかったと説明しましたが、犠牲者を増やした要因だとの声も上がっています。

将来的な山火事対策の財源確保のため、ハワイ州議会は宿泊税の引き上げを可決しました。増収分は気候変動対策や山火事対策に充てられる予定です。

日本からの支援

日本政府は、米国赤十字社や日本のNGOに対し、総額200万ドル規模の人道支援を行うことを発表しました。日本の国際NGOも看護師を含むスタッフを現地に派遣し、救援活動に協力しています。

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