ハンガリー放送交響楽団

ハンガリー放送交響楽団

ハンガリー放送交響楽団（Magyar Rádió Szimfonikus Zenekara）は、東欧に位置するハンガリーの首都、美しい街ブダペストを拠点に活動するプロフェッショナルなオーケストラです。その名の通り、ハンガリー公共放送の一部門として運営されています。

楽団の歴史は、第二次世界大戦中の激動期に始まります。その源流は1936年にハンガリー放送内に創設された小編成のサロン・オーケストラに遡ることができます。このアンサンブルが拡大・改組される形で、1943年に現在の「ハンガリー放送交響楽団」が正式に設立されました。設立当初の指揮者には、著名な作曲家・ピアニストであり、ハンガリー楽壇の重鎮であったエルンスト・フォン・ドホナーニが迎えられました。ドホナーニの指導のもと、楽団は基礎を固め、その音楽活動をスタートさせました。

ハンガリー放送交響楽団は、特に録音活動において国際的に知られています。多くの録音は「ブダペスト交響楽団」という名称で行われており、ハンガリーを代表するフンガロトン・レーベルを中心にリリースされています。楽団の長い歴史の中で、ジェルジ・レヘルが指揮したバルトークやコダーイといったハンガリーの国民的作曲家の作品集は特に重要な録音として高く評価されています。また、日本の指揮者である小林研一郎が指揮したストラヴィンスキーのバレエ音楽『春の祭典』の録音も、そのエネルギッシュな演奏で注目を集めました。クラシック音楽の録音に加え、近年では活動の幅を広げ、映画音楽やゲーム音楽といった現代のメディアのためのレコーディングにも積極的に取り組んでおり、多才な一面を見せています。

設立以来、ハンガリー放送交響楽団は数多くの優れた指揮者たちと共に歩んできました。初代のエルンスト・フォン・ドホナーニ（1943-1945）の後、ヤーノシュ・フェレンチク（1945-1947）やティボール・ポルガール（1947-1951）、ラースロー・ショモジ（1951-1956）といった指揮者たちが楽団の芸術的水準向上に貢献しました。特に、1956年から1989年までの長きにわたり音楽監督を務めたジェルジ・レヘルの時代は、楽団にとって黄金期の一つと言えるでしょう。レヘルの後も、アンドラーシュ・リゲティ（1989-1993）、タマーシュ・ヴァーシャーリ（1993-2004）、ラースロー・コヴァーチ（2004-2008）といった名指揮者たちが歴任し、楽団の伝統を受け継ぎました。アダム・フィッシャー（2008-2009）、スティーヴン・ダゴスティーノ（2009-2011）、ゲルゲイ・ヴァイダ（2011-2014）を経て、現在はヤーノシュ・コヴァーチュ（2014年より）、そして2022年からはリッカルド・フリッツァが指揮者陣に加わり、楽団の新たな時代を築いています。

歴代指揮者一覧:
[エルンスト・フォン・ドホナーニ]
[ヤーノシュ・フェレンチク]
ティボール・ポルガール(1947-1951)
ラースロー・ショモジ(1951-1956)
ジェルジ・レヘル(1956-1989)
アンドラーシュ・リゲティ(1989-1993)
タマーシュ・ヴァーシャーリ(1993-2004)
ラースロー・コヴァーチ(2004-2008)
[アダム・フィッシャー]
スティーヴン・ダゴスティーノ(2009-2011)
ゲルゲイ・ヴァイダ(2011-2014)
ヤーノシュ・コヴァーチュ(2014-)
* リッカルド・フリッツァ(2022-)

ハンガリー放送交響楽団は、ハンガリー国内での放送のための演奏活動はもちろんのこと、コンサートホールでの定期公演や国内外へのツアーを通じて、ハンガリーの豊かな音楽文化を発信し続けています。その柔軟な活動姿勢と確かな演奏能力により、クラシック音楽から現代音楽、そして映像音楽に至るまで、幅広いジャンルでその存在感を示しています。

もう一度検索