ハングリー・アース

「ハングリー・アース」：眠れる古代文明の脅威

2010年、イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』第5シリーズに放映された「ハングリー・アース」は、シリーズを代表する人気エピソードの一つです。脚本はクリス・チブナルが担当し、1984年以来の復活を果たした爬虫類型ヒューマノイド、サイルリアン族が物語の中心に据えられています。このエピソードは、続く「冷血」と合わせて二部作を構成しています。

物語は、11代目ドクター（マット・スミス）、エイミー・ポンド（カレン・ギラン）、ローリー・ウィリアムズ（アーサー・ダーヴィル）が、2020年のウェールズに降り立つところから始まります。そこでは、ナスリーン・チャウダリー（ミーラ・サイアル）率いる地下採掘計画が進められており、そのドリルが地中に眠るサイルリアンの文明を脅かす存在として認識されてしまいます。

サイルリアンは、地中からエイミーを拉致。ドクターとローリーは、捕獲されたサイルリアンのアラヤ（ネーヴ・マッキントッシュ）を確保することになります。アラヤの安否が戦争の引き金となる可能性を危惧したドクターは、ローリーと地元住民にアラヤへの危害を加えないよう指示。ナスリーンを連れてターディスに乗り込み、拉致された地元住民モウ（アラン・ラグラン）、その息子エリオット（サミュエル・デイヴィス）、そしてエイミーの救出に向かいます。

制作秘話：サイルリアンの復活と新たなデザイン

エグゼクティブ・プロデューサーのスティーヴン・モファットとピアーズ・ウェンガーは、クリス・チブナルにサイルリアンとドリルを軸にした二部作の執筆を依頼。モファットは、サイルリアンのデザインを一新することを望んでおり、チブナルと共に特徴的な装身具をデザインしました。

チブナルは、古典シリーズを研究し、サイルリアンを現代の視聴者にとって魅力的で恐ろしい存在として再構築することに注力。人類とサイルリアンがいかに互いに似て非なる存在であるかというテーマも織り込みました。また、サイルリアンの新デザインは、既存のデザインを否定するものではなく、異なる系統の種族として位置づけられました。高価な装身具の使用を制限するため、エキストラのサイルリアンには覆面が使用されました。

撮影は2009年10月～11月、ウェールズにて実施。エイミーの地中への落下シーンは、カレン・ギランの閉所恐怖症も織り交ぜた演出がなされました。

批評家の反応：賛否両論の評価

「ハングリー・アース」は、視聴者から賛否両論の評価を受けました。再デザインされたサイルリアンや、エイミーが地中に引きずり込まれるシーンは高く評価された一方で、物語の単純さやサイルリアンが十分に活用されていないという批判もありました。新たなデザインについて、オリジナルからの乖離を懸念する声もあがりました。

肯定的な評価としては、物語の緊迫感、ペース配分、不気味な演出、個性的なゲストキャラクターなどが挙げられました。また、マット・スミスとミーラ・サイアルの演技も称賛されました。一方で、物語の単純さや、サイルリアンがストーリー全体の一部に過ぎないという指摘もありました。

放送と反響

イギリスでは2010年5月22日にBBC Oneで放送され、視聴者数は649万人を記録。日本では2015年にAXNミステリーで放送されました。DVD、ブルーレイも発売され、高い人気を誇っています。

「ハングリー・アース」は、古典的な『ドクター・フー』の要素と現代的な演出が見事に融合した、記憶に残るエピソードと言えるでしょう。サイルリアンの復活、ドクターとコンパニオンの活躍、そしてスリリングな展開は、多くの視聴者を魅了し続け、シリーズにおける重要な一編として位置づけられています。

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