ハンス・ヴェルケ

ハンス・オットー・ヴェルケ

ハンス・オットー・ヴェルケ（Hans Otto Woellke、1911年2月18日 - 1943年3月26日）は、ドイツの陸上競技選手です。特に砲丸投を得意とし、1936年に開催されたベルリンオリンピックにおいて、この種目で金メダルを獲得した功績で知られています。

現在のポーランド領にあたる東プロイセンのビショフスブルク（現ビスクピェツ）で生を受けたヴェルケは、後にベルリンへと移り住み、警察官としてのキャリアをスタートさせました。警察署のクラブ活動を通じて砲丸投に打ち込み、その才能を開花させていきます。国際大会へのデビューは1934年、トリノで開催された第1回ヨーロッパ陸上選手権でした。この大会の砲丸投に出場したヴェルケは、14メートル67センチの記録を残しましたが、結果は8位にとどまり、世界の壁を実感することとなります。

しかし、その2年後、自国ドイツの首都ベルリンで開催されることとなったオリンピックで、彼は輝かしい成果を収めます。1936年ベルリンオリンピックの男子砲丸投競技において、ヴェルケは16メートル20センチという記録を樹立し、これは当時のオリンピック新記録となりました。この素晴らしい投てきにより、彼はフィンランドのスロ・ベールンドをはじめとする強豪選手たちを抑え、見事に金メダルを獲得したのです。この金メダルは、ドイツの男子陸上選手にとってオリンピック史上初めての快挙であり、ヴェルケは一躍国民的な英雄として称賛されました。彼の活躍は、著名な映画監督レニ・リーフェンシュタールによるベルリンオリンピックの記録映画『オリンピア』にも鮮やかに描写され、後世に伝えられることとなります。

スポーツ選手として栄光を掴んだヴェルケでしたが、時代の大きな波に巻き込まれることになります。第二次世界大戦が勃発すると、彼は軍務に就きました。東部戦線へ送られ、現在のベラルーシにあたる地域の連隊に配属されました。しかし、運命は彼に過酷な結末を用意していました。1943年3月26日、ベラルーシにて現地のパルチザン部隊との間で発生した激しい戦闘の中、ヴェルケは志半ばにして命を落としました。

ヴェルケの死は、その後に発生した悲劇的な事件とも関連付けられています。彼の所属部隊があった地域で、彼の死を含むパルチザンによる襲撃への報復として、住民が巻き込まれる凄惨な虐殺事件、いわゆるハティニ虐殺が発生したとされています。

短い生涯ではありましたが、ハンス・オットー・ヴェルケがベルリンオリンピックで獲得した金メダルは、ドイツ陸上競技史において特筆すべき出来事であり、彼の名はオリンピック史に刻まれています。彼の競技人生や軍歴については、オリンピック関連の歴史資料サイト Olympedia などでも紹介されています。

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