ハンタウイルス

ハンタウイルス

ハンタウイルスは、ブニヤウイルス科に属するウイルス群の一つで、小型哺乳動物を自然宿主としていますが、これらの動物には特に病原性を示さず、主に人間に感染した場合に深刻な健康問題を引き起こすことが知られています。感染によって引き起こされる病気には、腎症候性出血熱（HFRS）やハンタウイルス肺症候群（HPS）が含まれます。

概説

ハンタウイルスによって引き起こされる腎症候性出血熱は、一部地域では風土病として知られており、20世紀初頭からその存在が確認されていました。特にユーラシア大陸で広まり、韓国や中国、スカンジナビア諸国などでは異なる名称で呼ばれた歴史があります。1976年の研究において、高麗大学の研究者により韓国出血熱の原因ウイルスがセスジネズミから分離され、「ハンターンウイルス」と名付けられました。

その後、このウイルス群の様々な型が特定され、1993年にはアメリカでの流行により、ハンタウイルス肺症候群が報告され、シンノンブレウイルスとして知られるウイルスがその原因とされました。現在では、げっ歯目だけでなく、他の小型哺乳動物からも多数のハンタウイルスが発見されています。

構造

ハンタウイルスは、その粒子内に3本のマイナス鎖RNAを持ち、これをS（小）、M（中）、L（大）分節と呼びます。各分節は異なるタンパク質をコードしており、ウイルス粒子は80から120ナノメートルの直径を持つ球または卵形の構造を成します。

複製機構

ハンタウイルスの感染プロセスは、まず宿主細胞の受容体に結合することから始まります。この受容体にはβ3インテグリンなどが含まれ、感染が成立するとウイルスは細胞内部に取り込まれ、細胞質内で複製と出芽を行います。新たに形成されたウイルス粒子はゴルジ体を経て、細胞外に放出されます。

疫学

自然宿主となる小型哺乳動物には、中でもげっ歯類が多く見られます。ハンタウイルスは主に糞尿や唾液を通じて宿主間で感染が広がり、人への感染は空気中の粒子から引き起こされることが多いです。感染症は腎症候性出血熱やハンタウイルス肺症候群に分類され、地域によって発生状況が異なります。

主な疾患

腎症候性出血熱（HFRS）

症状は発熱や腎障害、出血を伴い、ウイルス型により致死率は異なります。特に韓国出血熱や流行性出血熱など、過去の呼び名から統合され現在の名称が用いられています。

ハンタウイルス肺症候群（HPS）

急性の呼吸器症状を伴い、致死率は約50%に上ることから、特に注意が必要とされています。

予防・治療

予防策には問題のある場所での衛生管理が重要で、ワクチンは検討段階にあります。治療に関しては、HFRS患者に対するリバビリンの投与が有望視されていますが、HPSの治療法は確立されていないため、対症療法が優先されるべきです。

法的取り扱い

ハンタウイルスによる疾病は、感染症法で感染症に分類されており、適切な報告が求められています。

もう一度検索