ハンドレページ ハリファックス

ハンドレページハリファックス：第二次世界大戦を支えた重爆撃機

ハンドレページハリファックスは、第二次世界大戦においてイギリス空軍が主力として運用した4発重爆撃機です。アブロランカスターと並ぶ同時代の傑作爆撃機として知られ、その生産数と運用期間の長さは、戦争における重要な役割を物語っています。本稿では、ハリファックスの開発から運用、そしてその派生型まで、詳細にわたって解説します。

開発：困難と革新の歩み

ハリファックスの開発は、ハンドレページ社による空軍省の仕様P.13/36への回答から始まりました。当初はバルチャーエンジンを搭載したH.P.56を設計しましたが、エンジン性能の不足から、より強力なロールスロイス製マーリンエンジン4基を搭載したH.P.57へと設計変更されました。性能向上を果たしたH.P.57は、試作機が初飛行する前に100機の大量発注を受け、ウェスト・ヨークシャーの都市名に因んで「ハリファックス」と命名されました。1939年9月24日、バイチェスター空軍基地でハリファックスMk Iが初飛行し、その歴史が始まりました。

ハリファックスの生産は、ハンドレページ社のみならず、イングリッシュ・エレクトリック、フェアリー・アビエーション、ルーツ・モーターズ、ロンドン・エアクラフト・プロダクションといった複数の企業が担いました。特にイングリッシュ・エレクトリックのサムレスバリー工場では、戦時中に2000機以上のハリファックスが生産されました。量産体制は非常に効率的で、ピーク時には1時間に1機のペースで生産されたと言われています。最終的に、6176機ものハリファックスが生産されました。生産は1946年11月まで継続されました。

設計：防御と搭載能力の両立

ハリファックスMk Iは、両翼に6発の爆弾を搭載できるほか、6.7mの爆弾倉を備えていました。最大搭載量は5897kgにも及び、その強力な攻撃能力は連合軍の作戦に大きな貢献を果たしました。エンジンにはマーリンエンジンが使用され、木製の恒速プロペラを駆動しました。防御火器は機首に2門、尾部に4門の7.7mmブローニングM1919重機関銃を搭載し、ボールトンポール製砲塔に収められていました。側面にはヴィッカーズK機関銃が備え付けられた機体もありました。

初期のMk Iには、主翼のエンジン2基が同時に停止したり、急激な機動時に錐揉み状態に陥る欠陥がありました。この原因は尾翼の設計にありました。改良が重ねられ、Mk IIシリーズではより強力なマーリンXXエンジン、改良された尾翼、そして二連装の7.7mm胴体背部砲塔などを採用しました。さらに、大型垂直尾翼とパースペックスノーズを採用したMk IIシリーズIAは、後のハリファックスの標準的な機首形状となりました。

ランディングギアは、当初メシエ製が予定されていましたが、供給不足からダウティ製に変更された派生型がMk Vとして登場しました。Mk Vは生産効率は向上しましたが、着陸重量が減少したため、主に沿岸軍団や訓練部隊で使用されました。

最も多く生産されたのは、ハーキュリーズXVIエンジンを搭載したMk IIIです。この強力なエンジンと、油圧可変プロペラ、丸みを帯びた翼端などの改良により、ハリファックスは更なる高性能化を果たしました。Mk IIIの1機は「Friday the 13th」と名付けられ、128回の作戦をこなした記録が残っています。

その他にも、ハーキュリーズエンジンに排気タービン過給器を組み合わせたMk IVの設計案もありましたが、生産には至りませんでした。最終型のB Mk VIとMk VIIは、強力なハーキュリーズエンジンを搭載した爆撃機として活躍しました。さらに、貨物や人員輸送を目的としたC Mk VIIIや、落下傘部隊輸送型のA Mk IXといった派生型も存在しました。民間用として、ハンドレページハルトンとして運用された機体もあります。

運用歴：広範囲に及んだ活躍

ハリファックスは1940年11月にイギリス空軍第35飛行隊に配備され、1941年3月に初の実戦爆撃を行いました。爆撃任務の他、グライダー曳航、対潜哨戒、電子戦など、多様な任務に投入されました。爆撃機として82,773回の作戦に参加し、224,207トンの爆弾を投下しました。損失機数は1,833機でした。イギリス空軍だけでなく、オーストラリア空軍、カナダ空軍、ニュージーランド空軍、ポーランド空軍など、多くの国の空軍で運用され、その活躍は世界中に広がりました。戦後も、イギリス空軍、フランス空軍、そしてパキスタン空軍で1961年まで使用されました。

まとめ

ハンドレページハリファックスは、第二次世界大戦におけるイギリス空軍の象徴的な重爆撃機でした。その開発、設計、運用は、困難と革新の連続であり、その成果は連合軍の勝利に大きく貢献しました。多様な派生型と世界各国での運用は、その高い汎用性と信頼性を示しています。ハリファックスの歴史は、戦争における技術革新と、人々の努力の結晶と言えるでしょう。

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