ハンブルトニアン10

ハンブルトニアン：北米スタンダードブレッドの父祖

[ハンブルトニアン]は、アメリカ合衆国ニューヨーク州生まれのスタンダードブレッドの種牡馬です。その名は、スタンダードブレッド界において最も重要な種牡馬として、トロッター競走（繋駕速歩競走の一種）の代表的なレースにも冠せられています。父はスタンダードブレッドのアブダラ、母はチャールズケントメアという血統です。体高は約154.4cmでした。

ハンブルトニアンという名称は、18世紀末にイギリスで活躍したサラブレッドと区別するために、ハンブルトニアン10、リスダイクハンブルトニアン、ミラーズハンブルトニアンなどとも呼ばれることがあります。

彼の父アブダラはスタンダードブレッドですが、その父であるマンブリノはサラブレッドであり、さらにその父系はイギリス生まれのメッセンジャーへと遡ります。メッセンジャーは、ペーサー競走（繋駕速歩競走の一種）の大レース「メッセンジャーステークス」の名祖として知られる名馬です。このようにハンブルトニアンの血統には、サラブレッドの血が流れていることがわかります。

競走馬としては、公式なレースに出走した記録はなく、トライアルレースでのタイムも現在の水準から見ると遅いものでした。そのため、1879年に制定されたスタンダードブレッドの基準にも満たなかったと言われています。

しかし、ハンブルトニアンの真価は種牡馬として発揮されました。1851年から1875年までの24年間で、1325頭もの産駒を残したのです。その中には種牡馬となった馬が130頭、繁殖牝馬となった馬が80頭も含まれていました。

特に、ハッピーミディアム、ディクテイター、アブダラ、ジョージワイクス、ハロルド、エレクショニアといった産駒は、大種牡馬として活躍し、その子孫はスタンダードブレッド界で大きな成功を収めました。現在、北米のスタンダードブレッドの99％以上が、ハンブルトニアンの父方直系の子孫であると言われています。

このことから、ハンブルトニアンは、現代のスタンダードブレッドの基礎を築いた、まさに「始祖」的な存在と言えるでしょう。彼の遺伝子は、今日のスタンダードブレッドの能力、体型、そして血統の土台を形成しており、その影響は計り知れません。彼の競走成績は華々しくありませんでしたが、種牡馬としての功績は、スタンダードブレッドの歴史において永遠に語り継がれるべき偉業と言えるでしょう。

なお、ハンブルトニアンの血統については諸説あり、また、上記血統表で便宜上「スタンダードブレッド」と表記している馬も、当時そのような名称で呼ばれていたわけではない点に注意が必要です。

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