ハヴァント (駆逐艦)

ハヴァント (HMS Havant, H32)

ハヴァントは、イギリス海軍のH級駆逐艦の一隻として、その短い生涯を駆け抜けた艦です。元々はブラジル海軍のファヴァリ（Javary）として建造されましたが、第二次世界大戦の勃発に伴い、イギリス海軍によって買収されました。

艦歴

1938年3月30日: 起工
1939年7月17日: 進水
1939年12月19日: 就役。イギリス海軍第9駆逐群に配属。

就役後、ハヴァントは直ちに戦時任務に投入されました。

1940年4月、フェロー諸島占領作戦に参加する重巡洋艦「サフォーク」を護衛しました。この作戦は、ドイツ軍による北欧侵攻を防ぐためのものであり、ハヴァントは重要な役割を担いました。

1940年5月には、アイスランドへの兵員輸送船団の護衛任務に就きました。これは、アイスランドが戦略的に重要な拠点であったため、イギリス軍が早期に駐留軍を配置する必要があったからです。

ダイナモ作戦（ダンケルク撤退作戦）

ハヴァントの艦歴において最も重要な作戦の一つが、ダイナモ作戦（ダンケルク撤退作戦）への参加です。ドイツ軍のフランス侵攻により、ダンケルクに取り残された連合軍兵士の撤退を支援するために、ハヴァントは献身的な活動を行いました。

1940年6月1日、ハヴァントは3度にわたる兵員輸送を行い、それぞれ500人、932人、そして1000人の兵士を安全な場所へと輸送しました。4度目の輸送では、500人の兵士を乗せていたところ、爆撃により損傷した駆逐艦「アイヴァンホー」から負傷した乗員と兵士を移乗させるという重要な任務を遂行しました。

しかし、ドーバーへの帰還中、ハヴァント自身もドイツ軍の爆撃を受け、2発の直撃弾と1発の至近弾により深刻な損傷を受けました。掃海艇「Saltash」が曳航を試みましたが、ハヴァントはついに力尽き、ダンケルク沖に沈没しました。この戦闘で、ハヴァントの乗員8名が死亡、25名が負傷し、さらに少なくとも25名の兵士が死亡するという悲劇に見舞われました。

ハヴァントの短い艦歴は、その献身的な活躍と悲劇的な最期によって、多くの人々の記憶に残るものとなりました。ダイナモ作戦におけるその貢献は、戦史において特筆されるべきものです。


参考文献

M.J.ホイットレー、『第二次大戦駆逐艦総覧』、岩重多四郎 訳、大日本絵画、2000年、ISBN 4-499-22710-0
Peter C. Smith, "Naval Warfare in the English Channel 1939-1945", Pen & Sword Books, 2007, ISBN 978-1-844155-80-4
Jhon English, "Amazon to Ivanhoe", World Ship Society, 1993, ISBN 0-905617-64-9

関連項目

* 第二次世界大戦中のイギリス海軍の喪失艦一覧

もう一度検索