フェロー諸島占領

フェロー諸島占領：第二次世界大戦下の戦略的転換点

第二次世界大戦中、イギリス軍は「ヴァレンタイン作戦」を発動し、デンマーク領であったフェロー諸島を占領しました。これは、ドイツ軍のデンマーク侵攻を受けて、イギリスが戦略的要衝を確保するための先制措置でした。終戦後、イギリス軍は撤退しましたが、この占領はフェロー諸島に大きな影響を与えました。

占領の経緯

1940年4月9日、ドイツ軍がデンマークとノルウェーへの侵攻を開始。これに対し、イギリス軍は4月11日にフェロー諸島の占領を発表しました。当時、フェロー諸島はデンマークの一自治体でしたが、本国が占領されたことで、島は孤立状態に置かれました。

4月12日、イギリス海軍の駆逐艦がトースハウン港に到着し、フェロー諸島知事や議会議長との会見が行われました。その後、議会が緊急招集され、独立派議員が独立を主張しましたが、否決されました。最終的に、フェロー諸島はイギリス軍の占領下に入り、夜間の灯火管制、郵便・電信の検閲、夜間の無許可車両使用禁止などが実施されました。

4月13日には、イギリス海兵隊が上陸し、政府知事との会見が行われました。知事は、本国が占領されているため正式な代表権がないとしながらも、イギリス軍に対し抗議の意を示しました。その後、イギリス軍はスコットランド連隊と交代し、1944年以降は占領軍が削減されました。

占領下の生活と影響

戦争中、フェロー諸島はドイツ空軍の攻撃を受けることもありましたが、全面的な侵攻は免れました。しかし、海上を漂う機雷は大きな問題となり、多くの漁船とその乗組員が犠牲となりました。フェロー諸島の船舶は、イギリス軍が“味方”と識別できるよう、旗を掲げ、船体に「FAROES / FØROYAR」と表示する必要がありました。

インフレ対策として、フェロー諸島で流通するデンマーク紙幣には、島内でのみ有効であることを示すスタンプが押されました。また、レクティング（フェロー諸島議会）は完全な立法権を与えられ、戦後の自治権獲得への足がかりとなりました。チャーチルは、デンマーク占領中のフェロー諸島の独立を認めませんでしたが、戦時中の自治経験は、戦後の自治領への移行を後押ししました。

1946年には独立を巡る住民投票が行われ、1948年に自治権を獲得しました。

占領の痕跡

イギリス軍の存在を示す最大の痕跡は、ヴォーアル空港です。この空港は、1942年から43年にかけてイギリス陸軍工兵隊によって建設されました。また、トースハウン港のSkansin要塞には、イギリス軍司令部が設置され、沿岸砲が残されています。意外なものとしては、イギリスのチョコレート「キャドバリー・デイリーミルク」が、戦後からフェロー諸島で愛され続けています。

フェロー諸島の旗の承認

デンマークがドイツに占領された後、フェロー諸島の船舶はデンマーク国旗を掲げることが許されませんでした。これは、フェロー諸島の経済を支える漁業にとって大きな問題でした。協議の結果、1940年4月25日、イギリス当局はフェロー諸島の商船旗として「Merkið」を承認しました。

ヴォーアル空港の建設

フェロー諸島にある唯一の飛行場であるヴォーアル空港は、イギリス陸軍工兵隊によって建設されました。イギリス兵の多くはヴォーアル島に駐屯し、飛行場建設に従事しました。戦後、空港は閉鎖されましたが、1963年に民間のヴォーアル空港として再開されました。

フェロー諸島占領は、第二次世界大戦という激動の時代における、フェロー諸島の歴史における重要な転換点となりました。

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