ハーフソード

ハーフソード

ハーフソードは、西洋剣術における特殊な技法の一つです。これは、14世紀後半から普及したプレートアーマーをまとった重装歩兵に対抗するために編み出されました。剣の中央部分を左手で握り、接近戦で鎧の隙間を突く戦法が特徴です。

基本的戦法

ハーフソードで使用する剣は、15世紀の戦争で用いられた両手持ちの剣、いわゆるバスタードソードに分類されるものです。この時代には、エストックやタッカーといった、突き刺しに特化した刃のない剣も登場し、ハーフソードの技法と組み合わせて使用されました。

構え方は流派や相手によって異なりますが、代表的なものに「毒蛇の構え」があります。これは、剣を側頭部に横に構え、剣先を相手に向け、右手で柄頭、左手で剣身を持つ攻撃的な構えです。ロングソードにおける「雄牛の構え」に似ており、上方からの突きを主体とします。

ドイツ剣術では、中段に構える第二の構えや、剣を前方に横向きに構える第三の構えなど、敵の攻撃に対するカウンターを重視した構えも存在します。

剣身を掴む左手はガントレットで保護されますが、熟練者はリカッソと呼ばれる刃のない部分を持つ剣を使用しました。イタリアの剣術家フィリッポ・ヴァーディは、剣は切っ先だけが研がれていれば良いと述べており、刺突攻撃に特化した剣の改良が進んでいたことを示唆しています。

当初、左手は順手で剣先を向け、槍のように攻撃していましたが、技術の確立とともに逆手で柄を握り、短剣術に近い戦い方へと変化しました。

ハーフソードの戦法は、剣術というよりも手槍術に近く、顔面、頸部、脇の下、籠手の内側、股間、両膝など、鎧で保護されていない部位を狙い突き刺します。極端に狭い間合いでの戦いとなるため、相手と鎧をこすり合わせるほどの肉弾戦になりがちで、剣の両端を持つことで相手の攻撃を制御する技術も重要になります。レスリングの技術も活用され、相手を押し倒して攻撃を加えることも有効です。また、剣先で突き刺すだけでなく、柄頭で殴りつける戦法も存在しました。

重装歩兵に対する効果的な戦法であると同時に、自らも重装歩兵であるため、無駄のない動作でスタミナを温存することが重要でした。しかし、そのためには十分な訓練と、冷静な判断力が必要とされました。最大の欠点は、相手が重装歩兵でなければ利点が少ない点でした。

歴史的背景

ハーフソードは、戦場を全身鎧が席巻した時代に登場しました。15世紀のドイツ剣術家ペーター・フォン・ダンツィヒの著書には、同時代の剣術家マルティン・フンツフェルトやアンドレによるハーフソードの解説が掲載されています。

14世紀後半から登場したプレートアーマーは、15世紀に改良され、イギリス式のホワイトアーマーやドイツ式のゴシックプレートアーマーが登場し、戦場を一変させました。従来の剣では、金属鎧への有効打が期待できなくなったため、鎧を打ち破るための武器や、鎧の隙間を狙う戦法が発達しました。

武器としては、メイスやウォーハンマーなどの打撃武器が登場し、戦法としてはハーフソードが用いられました。これらの戦術は両手で武器を扱うため、盾は不要となり、騎士も馬から降りて徒手で戦うことが多くなりました。

ハーフソードがいつまで戦場で使用されていたかは不明ですが、重装歩兵が姿を消し、戦争が集団戦へと移行した16世紀には、過去のものとなっていたと考えられます。剣による斬撃に耐えられた板金鎧も、ハルバードやポールアックスといった破壊力のある武器には無力であり、15世紀末の戦いでは、最高級の鎧を身につけた指揮官が、雇われた兵士によるハルバードの一撃で命を落とす事例も見られました。

戦場が傭兵による集団戦へと変化すると、高価な防具と武芸を習得する騎士は姿を消し、ハーフソードもその役目を終えました。

今日では、ハーフソードの存在は15世紀の剣術家による武術書や、現代における中世ヨーロッパ武術の研究（HEMA）を通じて知られています。

フィクション作品におけるハーフソード

漫画
『甲冑武闘』：薔薇戦争を舞台に、ハーフソードを主題とした短編漫画。
* 『ダンジョン飯』：登場人物カブルーがハーフソードで戦うシーンがある。

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