ポールアックス

ポールアックス（Poleaxe）

ポールアックスは、15世紀のヨーロッパで使用された武器であり、特に金属鎧をまとった重装歩兵との戦闘のために改良された両手持ちの斧です。戦場での主力武器としてだけでなく、騎士同士の決闘においても重要な役割を果たしました。

語源

現代では「長い柄の斧」を意味する“Poleaxe”という綴りが一般的ですが、本来は「頭」を意味する“Poll”を用いた“Pollaxe”が正しいとされています。これは「頭を砕くための斧」という意味合いを持ちます。また、「歩兵用の斧」という意味でフットマンズ・アックス（Footman's axe）と呼ばれることもあります。

各国や時代によって様々な呼び名があり、フランス語では「決闘用の斧」を意味する“Hache d'armes（アッシュ・ダルム）”、ドイツ語では「殺人斧」を意味する“Mordaxt（モルダクスト）”と呼ばれていました。当時の武術書にも様々な呼称が見られ、ポールアックスが「頭を粉砕する武器」の総称的な表現であったことが示唆されています。

形状

ポールアックスは必ずしも斧の形状をしているとは限らず、ウォーハンマーに分類される武器も含まれます。長さは1.5mから2m程度で、使用者の身長に合わせて調整されました。柄はトネリコなどの硬い木材で作られ、四角柱の形状をしていました。

斧頭、ハンマーまたはスパイク、槍の穂先が取り付けられたモジュール設計で、穂先はランゲットと呼ばれる金具で補強され、鍔迫り合いに備えたものもありました。斧頭は従来の斧に比べて小型で、打撃の衝撃を集中させることで装甲を破ることを目的としていました。中には、相手を制御することに特化した決闘用の仕様も見られました。

騎士などの高位の者が所持するポールアックスには、装飾が施されている場合もありました。斧頭には彫刻や金メッキが施され、製造場所を示す刻印が刻まれることもありました。

概要

ポールアックスの前身としては、9世紀から11世紀にかけてデーン人バイキングが使用した「デーン人の斧」が挙げられます。これは純粋な武器としての形状を持ち、馬上の騎士にも有効な一撃を与えることができました。ロングアックスがポールアックスやハルバードの前身であると考える研究者もいます。

14世紀後半にプレートアーマーが登場すると、従来の剣や斧による斬撃が有効でなくなり、ポールアックスが改良されるようになりました。ペスト禍による人口減少も影響し、民兵が動員されるようになると、彼らに対応した戦術が研究され、ポールウェポンの一種としてポールアックスが発展していきました。

騎士たちも重装歩兵に対抗するためにポールアックスを利用するようになり、専門の武術書も登場しました。ポールアックスは、相手を切り倒すだけでなく、転倒させたり、武器を奪ったり、攻撃を防御するためにも使用されました。穂先と石突きは突き攻撃に、長柄は打撃や押し込みに使用されました。

ポールアックスは、騎士たちによる決闘の武器として最も脚光を浴びました。騎士道物語が流行し、騎士たちは決闘に明け暮れるようになり、ポールアックスは決闘の重要な武器となりました。ただし、スポーツ的な決闘では、致命傷を避けるために斧頭が取り除かれ、競技用のスポーツ用品と化していきました。

16世紀にはルツェルンハンマーに取って代わられ、やがて儀式用の道具となっていきました。現代では、HEMA愛好家にとって人気の武器であり、安全なゴム製の斧頭が流通しています。

著名な使い手

ジョアン1世: ポルトガル王国の創始者であり、アルジュバロータの戦いでポールアックスを振るい武名を上げました。
ジャック・ド・ララン: ブルゴーニュ公に仕え、馬上槍試合で名を馳せた騎士であり、ポールアックスでの決闘でも多くの勝利を収めました。パ・ダルムと呼ばれる決闘で7人の騎士をポールアックスで打ち破るなどの武勇伝を残しました。

ラランはゲント反乱の鎮圧中に戦死しましたが、彼の死は大砲によって戦死した最初期の貴族の一人であり、中世騎士道時代の終焉を象徴するものとされています。

関連項目

ポールウェポン
ウォーハンマー

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