ハーランド・アンド・ウルフ

ハーランド・アンド・ウルフ：タイタニックを生んだ造船所の歴史

ハーランド・アンド・ウルフは、北アイルランドのベルファストに拠点を置く、イギリスの重工業メーカーです。1861年の創業以来、数多くの船舶を建造し、その中でも客船「タイタニック」の建造で世界的に有名になりました。現在では、船舶の設計、修理、改造に加えて、橋梁建設なども手掛けており、ベルファストには世界最大級のドックを保有しています。

創業と初期の成功

ハーランド・アンド・ウルフは、1861年にエドワード・ジェームズ・ハーランドとドイツ出身のグスタフ・ヴィルヘルム・ウルフによって設立されました。ハーランドは、1858年にロバート・ヒクソンがクイーンズ・アイランド区に設立した小規模な造船所を買収し、ヒクソンをゼネラルマネージャーとして雇用しました。その後、ハーランドは出資者であるガスタフ・シュワーブの甥にあたるウルフを共同経営者として迎え、ハーランド・アンド・ウルフが誕生しました。初期には、ビビー・ライン社向けの船舶建造で成功を収めました。

タイタニック建造

20世紀初頭、ハーランド・アンド・ウルフは、ホワイト・スター・ライン社のために、「タイタニック」、「ブリタニック」、「オリンピック」という3隻の豪華客船を建造しました。特にタイタニックは、当時世界最大の客船として注目を集めましたが、処女航海で沈没するという悲劇に見舞われました。しかし、タイタニックの建造は、ハーランド・アンド・ウルフの名を世界に知らしめることとなりました。

戦時下の貢献

第一次世界大戦中、ハーランド・アンド・ウルフは、モニター艦や巡洋艦など、軍艦の建造に大きく貢献しました。また、第二次世界大戦中には、航空母艦や巡洋艦など、131隻ものイギリス海軍艦艇を建造し、22,000隻以上の修理を請け負いました。さらに、戦車や大砲の部品も製造するなど、戦時下のイギリスを支える重要な役割を果たしました。

造船業の衰退と事業多角化

1950年代後半以降、ジェット旅客機の登場や日本の造船業の台頭により、イギリスの造船業は衰退の一途を辿りました。ハーランド・アンド・ウルフも例外ではなく、建造業は低迷しました。そのため、1960年代からイギリス政府の支援を受けながら、施設の近代化や大型客船の建造を行いましたが、経営状況は改善しませんでした。1977年には国有化され、ブリティッシュ・シップビルダーズ社の一部となりました。その後、民営化を経て、石油・ガス産業向けのタンカー建造や、橋梁建設など、事業の多角化を進めました。

近年の動向と現状

近年、ハーランド・アンド・ウルフは、再び造船に関する競争の激化に直面しました。2019年には経営破綻し、一時閉鎖されましたが、2024年12月、スペインの国営造船会社であるナバンティアによって買収され、再建を目指しています。

ハーランド・アンド・ウルフは、150年以上にわたる歴史の中で、造船業の隆盛と衰退を経験してきました。タイタニックという悲劇の象徴ともなった造船所ですが、その技術力と歴史は、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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