ハ51 (エンジン)

ハ51航空機用エンジン

ハ51は、第二次世界大戦中に日立航空機によって開発された航空機用の空冷星型エンジンです。このエンジンは、珍しい設計である空冷複列22気筒の構造を持ち、計画出力は2,500から3,000馬力に設定されていました。しかし、試作機のテスト運転の際には多くの問題が発生し、結局1945年4月の空襲によってその開発は中止されました。ハ51の製作数は4基に留まりました。

概要

ハ51は、ハ50エンジンと同じく空冷複列星型22気筒の設計を採用しながらも、強制冷却ファンが装備されている点が特徴です。開発の際、ハ45を参考にしたとの証言があるものの、エンジンの気筒設計には内径130mm、ストローク150mmという特性があり、これは栄系列のエンジン設計からの影響を感じさせます。また、ハ51の寸法は、ハ50と比較して直径が1,280mm、全長が1,800mmと、よりコンパクトに設計されています。特に、ハ51の離昇出力は2,450馬力を想定していましたが、ハ50の最大出力3,300馬力と比べると出力は控えめでした。なお、ハ51の乾燥重量は1,000kgです。

問題点

試作された4基のエンジンについては、陸軍側の評価が非常に厳しく、不完全な設計が原因で運転試験に多くの不具合が見つかりました。これには、約100時間にわたるテスト運転を通じて明らかになった問題が含まれています。

具体的な不具合としては、以下の内容が挙げられます：

• - 減速ギアのピニオン破壊
• - 過給器のインペラ破壊
• - カムプレートの機能不全
• - 過給器ベアリングの機能不全
• - 冷却ファンの駆動機構破壊
• - 潤滑油の漏洩や噴出

これらの問題は、複数の22気筒という設計選択から生じたものではありませんが、エンジン全体としての性能に深刻な影響を与えました。試験段階を超えることができず、実用化への道は閉ざされてしまいました。

主要諸元

数値は、信頼できる文献に基づいています。

出典

• - 胃袋豊彦「幻の大馬力エンジン」『歴史群像 太平洋戦史シリーズ31 陸海軍試作戦闘機』学習研究社、2001年。
• - 鈴木孝、柿賢一、高橋豊弘、中西正義「「ハ51型」星型22シリンダエンジンとガス電航空エンジンの系譜」『日本機械学会論文集(C編)』74巻、746号、2008年10月。

関連項目

• - ハ45
• - 航空用エンジンの一覧
• - 航空用エンジンメーカーの一覧

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